カンボウプラス

創立80周年
新たな領域の開拓に挑戦

キャンバス加工・製品製造のカンボウプラスは、2019年3月に創立80周年を迎えました。トラック幌などに使われる重布・帆布の防水加工からスタートし、現在ではテント構造物やサイン(広告)製品、防災・災害対策製品など幅広い分野に事業領域を広げています。2019年7月には創立80周年を記念して12年ぶりとなる自社開催の展示会を大阪と東京で開催しました。“新しい物を加える”を意味する「新加」をテーマに、事業領域の開拓に挑戦しています。

 

田島ルーフィング、カイハラと共同開発したデニム製フロア材
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田島ルーフィング、カイハラと共同開発したデニム製フロア材

創立80周年を記念した展示会では、重布部、製品部、機能資材部、新規事業部、管理部門、グループ会社の朝日加工がそれぞれ新商品を展示しました。重布部の断熱・遮熱ターポリン、製品部のスピーカー内蔵サイネージ「音なび」、機能資材部のブルーシート補修粘着テープ「チッパカ」、朝日加工の滑り止め加工「ダイナミックフォーム」などが注目されました。

また、異業種とのアライアンスによる新領域開拓にも力を入れています。その一つが屋根材・床材製造販売大手の田島ルーフィング、デニム製造販売大手のカイハラと共同開発したデニム製フロア材です。カンボウプラスの加工技術が採用されています。使われるうちに色落ちなど経年変化が生じ、それがフロアの味わいになるという新たなコンセプトの商品です。

展示会来場者を対象とした多彩なセミナーも実施しました。例えば、光触媒防汚機能テント材「ダイナスター」の品質保証体制について紹介し、7年保証と10年保証のタイプを新たに販売することを発表しています。また、カンボウプラスとしてのCSR 活動についても説明し、今後もESGの視点やSDGsを意識して事業運営を強化していくことを積極的に発信しました。

 

最終製品・施工まで視野に“新加”を目指す

 

─ 創立80周年を迎えました。カンボウプラスの強みは何でしょうか。

 

産業資材という特殊な分野で繊維の機能性を高める技術を磨いてきたことです。もともとトラック幌などに使われる帆布へのパラフィンを加工する防水加工から事業をスタートし、樹脂加工へと発展してきました。それに加えて、シートなど中間材から補修用テープ、コンテナバッグ、土木・建築資材など最終製品まで事業領域を広げてきました。特にここ30年は、そうした流れが顕著になっています。

─ 新しい領域の事業も拡大していきました。


サイン(広告)分野はその一例です。空港や高速道路沿いに設置されている看板は従来、アクリル板製が主流でした。これをシートにすることで現在のような大型化・軽量化が実現しています。防炎加工の面でもシートに優位性があります。こうした分野に当社の商品と技術が使われています。そのほかラグビーワールドカップで使用された日産スタジアムの人工芝も当社の製品が使われています。そして近年、需要が高まっているのが防災・災害復興分野です。わが国は、阪神・淡路大震災、東日本大震災といった大災害を経験し、日本政府が国土強靭化政策を推進している中で、当社はジオテキスタイル(土木補強用シート)等の生産に貢献しています。また防災向けでは、折り畳み式簡易水槽、ターポリン製救護担架などのラインアップを拡充し、2019年12月に東京で開催された展示会「気候変動・災害対策Biz2019」に出展するなど、お客様への提案を強化しています。

 

─ 90周年、100周年に向けて今後の戦略のポイントは何でしょうか。

 

従来型のシート材だけではいずれ限界があるでしょう。やはり最終製品を視野に入れて新しい領域に挑戦し続けることが重要になります。その一つとして現在、一級建築士資格を持つスタッフを拡充しています。これによりサイン分野などで素材・製品販売だけでなく設計・施工までを担う形のビジネスの拡大を目指します。また、野菜工場などで使われるシートやスポーツ用フロアシートなども新しい商品として力を入れます。今後も当社は、既存の商品や事業領域に対して常に新しい物を加えること、“新加”するカンボウプラスであり続けることを目指します。

 

注目が集まる防災・災害対策製品
「気候変動・災害対策Biz2019」に出展

災害用エアーテントは参考出品ながら注目を集めた
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災害用エアーテントは参考出品ながら注目を集めた

カンボウプラスは、2019年12月4日から6日まで東京ビッグサイトで開催された「気候変動・災害対策Biz2019」に出展し、独自の止水シートや災害用エアーテントなどの防災・災害対策製品を紹介しました。

特に注目が集まったのが、集中豪雨などから建物や用地を守るパネル型止水シート「パネテクター」です。建物の入口に置くと、独自の形状により水流で自動的に止水板が立ち上がり、水自体の重みで水の大規模な流入を防ぎます。軽量のため設置作業
も簡単で、止水作業で一般的に使われる土のうと比べて容易に設置できることが特徴です。また、都市部では土のうに詰める土の確保が難しくなりますが、パネテクターであれば、平常時には折り畳んでコンパクトに収納・保管できることも利便性が高いと評価されました。本展示会では、パネテクターを見るためにカンボウプラスのブースに訪問した来場者も多く、普及することで水害への備えになることが期待されます。

また、参考出品として新たに災害用エアーテントを紹介しました。二重構造のテント地の内部に空気を入れて自立させるタイプのテントです。一般的なテント材では縫製の強度の面から、テント内部の空気の圧力を高められず、テントの強度を保つことが難しいとされています。一方で、カンボウプラスが設計・開発した災害用エアーテントは、編み組織のテント生地が二重構造となっており、表面と裏面をつなぐ糸の構造が生地全体を支えているため、高い空気圧を維持して、テント全体の強度を高めることができます。気密性が高く、気温の変化などで空気が抜けにくいことも特徴であり、災害時に避難所に設営し、安定した空間で応急処置などの対応をするための拠点としての活用が見込まれます。

近年、日本は台風や洪水など大規模な自然災害に相次いで見舞われ、災害対策がこれまで以上に重要なテーマとなっています。初開催となった本展示会には、防災への関心の高い来場者が多く集まり、熱心に説明を聞いてもらうことができました。自然災害による被害を少しでも減らすために、カンボウプラスは、今後もさまざまな防災・災害対策製品の開発と提案に取り組みます。