─ 具体的な成果というと。

「新市場・新事業の創出」では、例えばダイワボウノイが扱うフタロシアニン加工技術の応用でメディカル分野やコスメ分野への参入の足掛かりができつつあります。また、ダイワボウプログレスのゴム製品事業では自転車やスポーツ用品関連で新規の取り引きが始まりましたし、ダイワボウレーヨンのレーヨン事業でも生活資材関係で新分野への参入が進んでいます。そのほかにもダイワボウノイ、ダイワボウプログレス、カンボウプラス、ダイワボウポリテック、ダイワボウレーヨンによる放射性物質の除染といった案件など、繊維事業会社の垣根を越えた体制で新しい事業に取り組んでおります。

さらにグループ協業による成果もあります。産業機械事業のオーエム製作所とITインフラ流通事業のディーアイエスソリューションが連携して新しい機械の開発もできました。繊維事業のカンボウプラスとITインフラ流通事業のディーアイエスアートワークスが連携して取り組むデジタルサイネージ、サウンドサイネージ事業も始まりました。これらは、従来はなかった動きであり、まさにグループ協業による新事業の創出といえます。

グローバル展開の推進では、昨年設立した大和紡績香港が大きな役割を果たしつつあります。香港を起点に、衣料品分野だけでなく、例えば中国への衛生材料やコスメ関係の商品提案が進んでいます。産業資材関連でもアセアン地域での市場が拡大しています。産業機械事業ではオーエム製作所の子会社、台湾オーエムが昨年、台湾での工作機械生産を開始しました。

同社は中国への販売を強化しており、日中関係の問題もあってやや計画は遅れているとはいえ、日中関係が改善すれば急回復が期待できます。

アセアン地域でもインドネシアのジャカルタ事務所を拠点にプロモーションが進展しました。アセアン地域でもインフラの整備が加速していますので、オーエム製作所が製造する工作専用機械の需要が確実に高まりつつあります。
 

 

─コーポレートブランドの強化では、成果はやや不十分とのことですが。

当社の事業は、BtoBが中心ですから、急激にコンシューマに対して知名度を上げるというわけにはいきません。前2つの基本方針を実行する中で、徐々にBtoBでのブランド力を
高め、それをBtoCに波及させていくということが重要です。そのために、昨年から各事業とも国内外の展示会などに積極的に参加し、そこで “ダイワボウブランド” としての打ち出
しを強化してきました。

いずれにしても、中期経営計画初年度である今期の目標を達成することが極めて重要です。そのためにはこの1月から3月までの第4四半期が勝負の分かれ目となるでしょう。引き続きITインフラ流通事業と繊維事業、産業機械事業を主力に成果を上げることが重要です。

 

インドネシア、中国で新たな事業展開

─ 4月からは新しい事業年度が始まります。今後の方針をお聞かせください。

グローバル戦略の面では、工場建設を進めているインドネシアの不織布子会社のダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)に期待しています。2014年にはフル稼働を計画していますので、今年はそのためにマーケットの開拓が極めて重要になります。香港では、大和紡績香港が人材育成から金融管理まで行える体制を整え、現地で円、ドル、人民元、ルピア、ユーロを管理することで活動の幅が広がるでしょう。現地での資金調達もありえます。中国に関しては昨年、愛思凱爾物流(蘇州)(SKL物流)を設立しました。これまでの蘇州大和針織服装と大和紡工業(蘇州)での衣料品製造だけでなく、国際物流分野にも参入しました。これを活用し、中国からアセアン、アセアンから欧米といった商流でアパレル製品の物流や検針・検品といった物流加工サービス事業を展開できます。しかもSKL物流では衣料品だけでなく、産業用関連の商材の取り扱いも可能ですから、将来的に様々な事業展開が期待できます。

一方、新市場・新事業の創出という面では、引き続きメディカルやコスメ分野で国際マーケットでの事業展開を加速させることになります。取引先企業と協業しながら取り組むことが重要になります。すでに中国でも産学の共同研究などを進めています。また、ダイワボウ情報システム(DIS)が教育用タブレットPCといったIT機器を公立小学校に提供し、子供たちがデジタル社会を生きていくための能力育成を目指すICT活用実証研究をスタートさせます。これも新しい市場の創造という意味で期待が大きいですね。さらに教育分野に貢献することでダイワボウブランドの認知度向上という点でも大きな意味があります。

そのほか、ニッチな分野ですが、主力3事業以外でも様々な可能性があります。例えば、インドネシアなど東南アジアでは日本食が大変なブームになっています。そこで、ダイワボウライフサポートが販売するおこわ製品なども海外で販売できる可能性があります。とにかくあらゆる分野で市場に適した商品を提供することが、ダイワボウブランドの構築につながるはずです。もちろん、展示会への出展なども地道に行っていくことが欠かせません。

お客様が必要とする商品をニッチな部分まで含めて提供するのが「社会インフラ」の提供を使命とするダイワボウグループの役割です。そのためには、今までにない新しいビジネススタイルでの取り組みをさらに強化しなければなりません。また、単に商品を製造・販売するだけでなく、それをユーザーに届けるためのソリューションまで担うことを目指しています。常に時代の変化を先取りしながら、株主や取引先といったステークホルダーの皆様の満足度をこれまで以上に高めていくことを目指します。