繊維事業の海外ネットワーク

中期経営計画「イノベーション21」では、基本方針のひとつに「グローバル戦略の推進」を掲げています。繊維事業では、衣料品・生活資材事業が2011年にインドネシアに縫製子会社、ダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)を設立したのに続き、2012年には中国に物流子会社、愛思凱爾物流(蘇州)有限公司(SKL物流)を設立するなど生産から物流まで一貫で事業を展開する基盤整備を強化しました。

化合繊・機能資材事業も2012年にインドネシアにエアスルー不織布製造子会社、ダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)を設立し、2014年1月からの工場稼働を計画しています。繊維事業のアジア戦略の“扇の要”となる大和紡績香港有限公司も2012年の設立以来、積極的な活動を続けています。アジアを起点に素材から最終製品まで最適ソリューションを提供するダイワボウグループの繊維事業の活動を紹介します。

 

最適ソリューションを提供する繊維事業

日本、アジア、欧米にダイワボウのネットワークを構築

衣料品・生活資材事業は、これまでもインドネシア子会社のダヤニ・ガーメント・インドネシア(DGI)で米国向けインナー製品の製造販売で大きな実績を重ねてきました。“チャイナ・プラスワン”のニーズが高まるにつれて、その存在感は一段と大きくなっています。その一方、DGIがあるジャカルタ近郊は人件費の上昇が激しく、縫製事業にとって環境が厳しさを増します。このため11年に中部ジャワ地区にダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)を設立し、布帛製トランクスなど定番商品の生産を移管すると同時に、DGIはメディカル製品やパジャマ、ドレスシャツなど高付加価値品縫製に転換するなど役割を高度化させています。

一方、中国では物流子会社の愛思凱爾物流(蘇州)有限公司(SKL物流)を設立し、国際物流分野に参入しました。縫製子会社の蘇州大和針織服装有限公司と成型インナー製造の大和紡工業(蘇州)有限公司と合わせて生産から検針・検品など物流加工までの一貫対応が可能になります。

こうした繊維事業のアジア戦略の結節点となるのが大和紡績香港有限公司です。香港は欧米アパレルのソーシング拠点であり、中国大陸への玄関口。金融インフラにも優れます。香港を拠点に欧米アパレルや中国内販に向けてDGIやDAIの商品を提案しています。また、DGIやDAI以外で委託生産するボトム製品なども香港経由で欧米カジュアルアパレルへの販売が始まりました。単に製品を生産するだけでなく、物流や販売までを担うことで素材から店頭までをつなげることがダイワボウの衣料品・生活資材事業の目指す姿です。日本、アジア、欧米を結ぶダイワボウグループのソリューションネットワークが日々、広がり続けています。

拡大するアジア需要衛材・コスメ製品で市場開拓

化合繊・機能資材事業は昨年、インドネシアにエアスルー不織布製造子会社、ダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)を設立しました。今年1月に工場建設に着工し、10月には完成の予定です。2014年1月から稼働の計画となります。

近年、アジア各国で紙ナプキンや紙オムツなど不織布製衛生製品の需要が高まりました。1人当たりの国内総生産(GDP)が1000㌦を超えると紙ナプキンが普及し、3000㌦を超えると紙オムツが普及するといわれますが、インドネシアなどアセアン諸国は、まさにこの段階。このため世界の有力衛生製品メーカーがアジア各地での生産を拡大させています。今回、ダイワボウポリテックがDNIを設立したのも、こうした動向に対応するためです。

DNIの強みは、日本の有力衛生製品メーカーとの取り組みによって蓄積された原綿開発から不織布原反の設計、最終製品企画までのノウハウです。こうした“ジャパン・クオリティ”を武器に、インドネシアだけでなく中国や他のアジア諸国への不織布販売を進めます。

一方、スパンレース不織布でもアジア戦略が加速しました。フェイスマスク用シートや半製品、最終製品を大和紡績香港を通じて中国に販売する取り組みが進みました。中国でもフェイスマスクなど高付加価値のコスメ製品需要が高まっていますが、ここでも日本で蓄積したノウハウと品質で市場開拓を進めています。香港で開かれたコスメ製品展示会「コスモプロフ」にも出展し、大きな反響を得ました。現在、中国で半製品や最終製品の委託生産先となる不織布加工メーカーの開拓も大和紡績香港を中心に進めており、アジアでの生産・販売ネットワークの構築が進行中です。

 

“日本のモノ作り”をアジアで生かす

 

衣料品・生活資材の分野では、日本だけで完結するビジネスは縮小が避けられません。事業の拡大には、必ず海外展開が重要になります。衣料品・生活資材事業では従来からダイワボウノイを中心に海外中心の事業展開を推進してきました。こうした経験を今後は繊維事業全体で生かしていかなければなりません。アジアの各拠点が連携することで日本向け、アジア内需、そして欧米向け製品に対するネットワーク作りを進めます。その起点になるのが、日本、中国、インドネシア、そしてベトナムなど他のアセアン諸国の中心に位置する香港。優れた金融インフラや情報集積など地の利を生かした活動を実行する考えです。

“日本のモノ作りの良さ”をアジアのネットワークの中で生かしていくことが大きな目標となります。現在、大和紡績香港は、若手社員を中心とした駐在スタッフが活動しており、新しいことに挑戦しようという気運に満ちています。香港の独自性も発揮しながら、ダイワボウグループの繊維事業のアジア戦略の中での役割を担っていきたいと思います。

 

アジアから世界の衛生製品を変える

 

現在、アジア各国では衛生・コスメ分野の不織布製品需要が急拡大しており、一説には2020年にはナプキン・オムツ用の不織布原反需要は現在の3倍規模にまで拡大すると予想されています。こうした動向に対応するためにDNIを設立しました。不織布製品は今後、需要の拡大だけでなくアジアでも日本のように高額でも高品質な商品が好まれるという“プレミアム化”が進むと考えています。ダイワボウグループでは、ファイバー開発から取り組む品質で、こうしたプレミアムゾーンの不織布に取り組むことを目指しています。

さらに日本の衛生用不織布製品に対する感性は、世界の商品トレンドを変化させる可能性すら秘めています。すでにアジア各国では日本の衛生製品メーカーの商品特徴である“清潔感”や“使用感”が急速に受け入れられており、これに欧米メーカーも追随する傾向が強まっているからです。そのカギを握るのが、当社が生産するエアスルー不織布だとの自負があります。今後、日本のお客様によって鍛え上げられたファイバーからの技術とノウハウを生かして、アジアから世界の衛材・コスメ用不織布の市場を変えるような商品の提供を目指します。