ダイワボウホールディングスは2014年4月から中期経営計画「イノベーション21」の最終年度を迎えます。中期経営計画の達成に向けて14年度の課題と方針を繊維、ITインフラ流通、産業機械の主力3事業の各トップに語っていただきました。

 

基本方針に3つの“G” ─ 繊維事業

 

─ 2013年度を振り返ると繊維事業の状況はいかがでしたか。

中期経営計画2年目である13年度は繊維事業全体で増収となる見通しですが、円安で利益面では各事業が明暗を分けました。海外縫製による製品事業の比率が高い衣料品・生活資材分野は調達コストの増加と主要生産拠点での人件費高騰により収益構造が大きく変化しましたから、流通チャネルと商品構成の抜本的見直し、インドネシア・中部ジャワ地区への工場移転など最適生産体制の構築、産学協同による差別化原料の開発と紙糸などのファィバーを基点とした機能性製品の販売展開を急いでいます。
化合繊・機能資材分野は、合繊原綿では衛生材料や建材の旺盛な需要により前年とは打って変わって好調で、工場もフル生産が続いています。不織布部門もワイパーやコスメ商品の売り上げが伸び、昨年12月にはインドネシアでダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)の開所式を行い、不織布事業で初めての海外工場を始動させました。レーヨン部門は不織布用原綿と対米向け防炎素材は競争激化で伸び悩んだものの衣料用機能性原綿は需要拡大により順調に伸びています。樹脂加工部門では震災関連需要などにより、建設土木向けが堅調に推移し、機能製品部門はインドネシア生産拠点を活用したカンバス製品がアセアン向けに伸び、産業用シートも日本向けの活発な需要により稼働率が高まっています。国内外ともに一段の構造改革を進めると同時に、グルーブ協業による事業領域の拡大、研究開発を基点とした国内収益体制の強化、香港現地法人である大和紡績香港と連動したアジア市場攻略の戦略的基盤を確立した年だったといえるでしょう。
 

 

─ 2014年の課題と方針をお聞かせください。

繊維事業は基本方針に3つのGとしてGrowth(成長戦略)、Global(グローバル)、Group(グループ)を掲げています。成長戦略については、売上高は一定の成果を挙げていますが、利益面では当初目標に対して大きく乖離していますので、中計最終年度である14年度は「利益ある成長」を基本方針に売上高680億円、営業利益20億円、売上高営業利益率3%を目標に戦略遂行能力と管理運営の精度を向上させます。繊維事業は06年の会社分割により製販一体のキャシュフロー経営が徹底されてきたので連結収益力の強化とともに使用総資本利益率を高めることでグループでの存在感を高めたい。アジアでの紙おむつやナプキンなどの衛生材市場の拡大を睨み本年半ばにも播磨工場の原綿生産能力を増強します。1月に本格操業をスタートさせるDNIの不織布ライン増設も視野に入れて高機能衛材市場向けに事業展開を強化します。
グローバル市場戦略はDNI開設により、インドネシア国内に7事業会社を擁することになります。当社からの出向社員も20人を超え、ヒト・モノ・カネなど経営資源の集積度が増しています。15年にはASEAN経済共同体が創設されることで、地域の経済統合が一段と進み、6億人の巨大市場が生まれます。この好機に大和紡績香港との連動でアセアン地域での市場戦略を本格的に深耕させる考えです。
グループ連携戦略では組織体制として、グループ連携戦略会議とグループ技術開発会議があり、3カ月に1回の会議でテーマ選定、進捗状況の確認、今後の展開方針を決めています。すでに各事業会社の商流の相互活用による販売領域の拡大や震災復興関連で協業を進め成果を挙げています。生産体制や研究開発ではジャパンクオリティが新興国で高い評価を受けており、政府も産業競争力の強化を成長戦略の大きな柱に掲げているわけですから、当社グループとしても国内と海外を俯瞰した「ものづくり」のあり方や各社に分散している技術資産(研究人材・知的財産権)の集中化、単なる研究開発体制から「技術経営」のレベルに高めることでグループ協業体制との相乗効果で強固な繊維事業の収益基盤を確立したいと思います。
 

 

─ ダイワボウブランド構築への戦略はいかがですか。

ITインフラ流通と産業機械分野とのグループ協業は、テーマ審議会の開催のなかでブルーオシャンを目指して活動しています。DISの販売先・仕入先に向けた機能性製品の販売ルート開拓に加え、オーエム製作所とは昨年11月の鉄道技術展にグループの鉄道関連商材を展示するなど相互連携を進めました。繊維事業は分社経営ですからグループ協業によるワンカンパニーとしての総合力が顧客価値を創出するブランド力となっています。5000億円を超えるグループ全体の売上高は業容の拡大とともにダイワボウブランドとしての大きなパワーとなり、とくに海外での新規取引先の開拓や事業展開を行う上で大きな推進力となっています。
 

 

情報を活用した提案を推進 ─ITインフラ流通事業

 

─ 2013年度もあとわずかですが、ここまでを振り返ると。

昨年は主に法人向けの販売が好調でした。設備増強に積極的な通信事業者や教育用ICT環境の整備が進む文教市場向けを中心に好調に推移しましたし、現在も利用者の多い旧OSのサポート終了を2014年4月に控え、更新需要が見込まれていたこともあり、首都圏など都市部を中心に売り上げを拡大することができました。一方、個人向け市場についてはインターネット閲覧やSNS(ソーシャルネットワークサービス)、動画像視聴などにスマートフォン・タブレットが普及したことでタブレットの販売台数は伸びたのですが、全体としては厳しい状況でした。そこで従来から掲げている地域密着の基本方針の下、当社グループ主催の展示会「DISわぁるど」を山形で開催したのをはじめ、全国各地で当社が主体となって開催する展示会やセミナーを通じたメーカーや販売店との協業で需要喚起と案件獲得を進めました。また、Web販売サイト「iDATEN(韋駄天)」の普及や、EDI取引の推進、サポート・サービス提供など顧客へのサービス向上と販売効率の向上を進めたことでパソコン・サーバーの出荷台数は上半期129万台を超え、周辺機器、ソフトウェアの販売も拡大したことで上期売上高は前年同期比1割強の増収、利益面においても前年を上回っています。
 

 

─ 2014年度の課題と方針をお聞かせください。

国内IT調査会社(IDC Japan)の発表によると、2013年6月末での国内法人パソコンは約3,500万台程度稼働しており、そのうち約3割にあたる1,000万台が旧OS搭載パソコンとされています。これらの買い替えが順調に進むことで今期中から来期の初頭にかけて法人向けパソコンの特需が見込まれています。この需要を確実に取り込み、売上高拡大を目指します。一方、買い替え特需や消費増税を控えた駆け込み需要の反動が懸念材料ですから、生産性を上げるとともに、新たな分野の顧客ニーズの開拓など従来からの取り組みに加えて、ICT市場のすそ野の広がり、多様化に対応・挑戦することが重要です。営業活動も従来以上に戦略的・効率的に行うことが肝要でしょう。昨年5月に刷新した販売管理システムを活用し、各地域・顧客の情報をしっかりと蓄積・活用した提案に取り組んでいます。通信事業やクラウド技術による新規のビジネスの拡大や、成長が見込める周辺機器、ソフトウェアへの取り組み強化で付加価値商品の拡販による収益力強化を推進します。
 

 

─ ダイワボウブランド構築に向けて事業会社としての戦略は何でしょうか。

ダイワボウグループを担うITインフラ流通事業として、まずは計画数値を着実に達成することがダイワボウブランドの向上につながると考えています。また、「DISわぁるど」を今年は大分県で開催しますが、これ以外にも全国各地で当社が主体となって開催する「DISブランド」の展示会・セミナーを通じて地域の皆様に最新情報をお伝えすることが「DIS」「ダイワボウ」ブランド向上の一助になればと考えています。グループ協業については、グループ各社で協業をすすめており、デジタルサイネージなどの分野で新しい試みが始まっています。今後もグループ内の連携をより密にして果敢に挑戦することが重要です。
 

 

国内外で生産・販売基盤を拡充 ─産業機械事業

 

─ 2014年3月期も後半ですが、今期を振り返ると。

ある程度は計画通りに実行できた年でした。とくに海外での事業展開で成果が出ています。中国はこれまで上海事務所を置いていましたが、昨年は現地法人としてオーエム上海を設立し、7月には開所式も行いました。現地ディーラーの皆さんにも参加いただき、機械の紹介やセミナーを開催するなど連携を強めています。生産面でも台湾オーエムで立旋盤「OM-TX」シリーズの生産がスタートし、中国への販売も始まりました。台湾生産によって競合する韓国・台湾メーカーに価格面で対抗できるようになりました。品質面では自信を持っています。実際に5、6年前に韓台製の立旋盤を導入した企業が品質に満足できず、当社の立旋盤に更新するケースが増えています。米国市場も手応えがありました。現在、米国ではシェールガス関連で設備投資が増加しており、立旋盤の需要も拡大しています。さらに航空機分野での拡販にも取り組んできました。
一方、課題は自動包装機です。主力の日用品、製菓、食品分野に加えて薬品分野への参入を強めました。ジェネリック薬の受託生産メーカーで設備投資が進んでいたからです。ダイワボウ情報システム(DIS)の協力を得て、富山営業所を開設したことで新規案件を獲得するなど成果もあったのですが、どうしても先行投資的なコストアップが重なり、収益面で苦戦してしまいました。今後は自動包装機も営業の方法から見直しを進め、より効率的な受注・生産体制を作る必要があります。
 

 

─ 2014年度の戦略をお聞かせください。

立旋盤は国内での生産基盤を強化します。そのために長岡工場に発電用タービン分野などに使うテーブル径3~8メートルの大型立旋盤用の新工場を建設しており、今年秋頃には竣工予定です。これによって長岡工場は大型立旋盤の比重を高め、航空機用途などが主力のテーブル径1~3メートルの機種は顧客ニーズに合わせて長岡工場とオーエム金属工業、台湾オーエムの3拠点で柔軟に生産する体制を整えます。
グループ各社とのコラボレーションも来期のテーマです。すでにディーアイエスソリューションと連携して工作機械や自動機でのICTの活用を進めています。例えば遠隔操作、動画マニュアルなどを組み込んだスマートカートナーを見本市でも披露しました。今後は稼働データのモニタリングシステムなどにも取り組む計画です。来期は中期経営計画の最終年度ですから、まずは具体的な開発を行い、次期中期計画中には実用化したいと考えています。
 

 

─ 海外戦略についてはいかがですか。

まずは中国と米国の市場を深掘りすることです。とくに米国は販売網を再構築するためにO-M(USA)に続く新たな拠点設立も検討中です。また、インドネシアなどアセアン地域では自動機の提案を進めます。そのためには食品や日用品分野を中心に現地のニーズに合った機種を開発することが欠かせません。ダイワボウグループ各社と連携しながら取り組みます。これは“ダイワボウ”ブランドの強化でも同じです。ユーザー企業の中には、新しい素材を探している企業が実際に存在します。そういった企業から声をかけていただけることは強みです。そういった取り組みから、新しい需要も出てくるでしょう。