2012年4月からスタートしたダイワボウホールディングスの3カ年中期経営計画「イノベーション21」も折り返し地点を迎えようとしています。そこで阪口政明社長に初年度を振り返りながら、これまでの成果と今後の課題を中心に語っていただきました。

 

 

─ 3カ年中期経営計画「イノベーション21」も間もなく折返し地点です。ここまでの成果をどのように見ておられますか。

「イノベーション21」では「シナジー効果による新市場・新事業の創出」「グローバル戦略の推進」「独自性と差別化の追求によるコーポレートブランドの強化」という3つの基本方針を掲げて取り組んでいます。初年度である2013年3月期を振り返ると、売上高は計画を上回ったのですが、利益面で若干の未達に終わるなど、まだ満足できるものではありません。中核3事業では主力のITインフラ流通事業がグループ全体の業績に大きく貢献する一方、祖業である繊維事業は化合繊・機能資材事業で震災復興特需が一巡したことや衣料品・生活資材事業もブラジル子会社の回復がまだ完全ではないなど課題が残りました。
しかし、基本方針で掲げたシナジー効果による新市場・新事業の創出という面では成果も具体化しています。例えば大和紡績香港を起点にダイワボウノイ、ダイワボウポリテック、ダイワボウプログレス、ダイワボウレーヨンが連携して国際展開を目指す動きが具体化しており、また産業機械事業のオーエム製作所も昨年、ITインフラ流通事業のダイワボウ情報システム(DIS)との協業で富山市に営業所を設置し、製薬関連で自動包装機などの新規取引の可能性が広がっております。このように、シナジー効果による新市場・新事業の創出というシナリオは順調に進んでいるといえるでしょう。ただ問題は、そのスピードです。まだまだ十分ではありません。今後はスピード感を持った実践で結果を出すことが必要です。

 

─ 今期もほぼ半分が終わりました。

第1四半期はITインフラ流通事業を中心に計画通りに推移しています。産業機械事業も円安の追い風を受けて好調です。とくに立旋盤は対米輸出のオーダーが増加し、オーエム製作所の長岡工場もフル稼働が続いています。背景には米国でのいわゆる“シェールガス革命”があります。老朽設備ではシェールガスなど新しい分野に対応できないことからエネルギー関連施設などで設備投資が加速しており、そういった設備の製造に欠かせない立旋盤の需要が高まっています。このため今年中に長岡工場を増強し、生産効率を高めながら増産体制を整備します。
繊維事業はインドネシアなど海外生産拠点での人件費上昇などのコストアップにどう対応するかが重要になります。そのためにインドネシアでは現在、定番品などは中部ジャワ地区に設立したダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)への移管を進めています。また、為替リスクをヘッジする意味でもドル決済による海外生産・販売、いわゆる“外・外”のビジネスを増やす必要があります。来年にはインドネシアで不織布製造のダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)も本格的に稼働いたしますが、こちらも“外・外”のビジネスが大きくなっていく可能性があります。大和紡績香港を通じて中国や台湾への販売も増えていくことになるでしょう。現在、各事業会社はいずれも海外展開に力を注いでおります。もちろん為替動向や人件費の上昇など新たなカントリーリスクも負うことになりますが、状況に応じて迅速に対応することが海外事業のポイントになります。

 

─ ITインフラ流通事業と産業機械事業についてはいかがですか。

ITインフラ流通事業は、教育機関へのIT端末・ソフトウエア供給などスクールイノベーションが本格化し、新しい需要が生まれています。IT機器も従来の単品販売からソフトウエアや物流まで含めたソリューション型ビジネスへの転換が進みましたし、そのために基幹システムも更新しました。産業機械事業については、シェールガスに代表されるような新しい需要を更に取り込むことが重要になります。

 

─ 中計達成に向けた重点ポイントは何でしょうか。

事業を取り巻く情勢に関しては、まさに社会構造の大転換期にあるといえるでしょう。まずはこのことを強く認識して事にあたらなければなりません。これまでの延長線上に未来はありません。成功への道は、自らを変革し、自らの手で未来を創造することにより切り拓くことができるものと考えます。当社グループにおいては、新たな成長モデルの確立を大きな命題としておりこの命題を達成するためには、まず中核3事業とも“脱コモディティ”が大きなテーマになってくるでしょう。加えてグループ事業の連携によるシナジー効果の発揮も鍵と考えます。
こうした事業変革にとって最も重要視していることはスピードです。意思決定と施策実行において、常に先手を心掛け、機を逃さずスピーディーに、計画目標の達成に取り組んでまいりますので、引き続きご指導ご支援をお願いいたします。