経営資源・販路共有で新市場・新用途開拓

 

ダイワボウグループの“祖業”である繊維事業は、3次9年に渡る前中期経営計画「ニューステージ21」を通じて生産、販売両面にわたってグローバル拠点の整備を進めるなど事業構造の抜本的改革に取り組んできました。新中期経営計画「イノベーション21」では、衣料品・生活資材、化合繊・機能資材という事業の枠を越えて、新市場・新用途の開拓に取り組みます。大和紡績社長で当社代表取締役専務執行役員の北孝一氏に今後の戦略をお聞きしました。

─前中期経営計画「ニューステージ21」の結果をどのようにふり返っておられますか。

第3次計画まで9年間取り組んできたわけですが、繊維事業のテーマは、新たな成長に向けての構造改革でした。2003年からスタートした第一次計画では、ダイワボウポリテックの美川工場に約20億円を投じて不織布製造設備を入れたのを皮切りに、中国で大和紡工業〈蘇州〉の設立、インドネシアでダイワボウシーテックインドネシアの設立などを進めました。また、機能性マスクやコスメ関連商品など機能性商品の開発を産学共同も含めて推進してきました。2008年のリーマンショックの事業環境の激変に対して、ブラジル子会社の改革が遅れているという課題は残りましたが、インドネシアでは縫製子会社のダヤニガーメント・インドネシアが人件費上昇に直面するといった課題に対して、新たにダイワボウガーメント・インドネシアを新設するなど手を打ってきました。さらに、中国子会社も同国の消費市場の拡大に対応した中国内販に向けて、従来の生産拠点に検品と物流などのサービス事業との複合機能を有した事業体への転換に取り組んでいます。いずれの地域でも経済成長と産業構造の高度化が進展しており、それに対応して事業構造の転換に迫られていたわけです。こうした取り組みの中で、2011年にはジャカルタ事務所を開設し、そして今年、香港に大和紡績香港を設立しました。この9年間でグローバル化に向けた拠点の整備が進み、さらに、繊維事業の捉え方やコンセプトも、化合繊・機能資材や衣料品・生活資材の分野を中心に、顧客満足あるいは社会貢献を目指す「生活インフラ事業」の位置づけで事業内容を変革しています。この結果、2012年3月期では繊維事業の主要事業会社6社は、すべてが営業利益を計上するようになり、収益構造の改善が進んだといえるでしょう。

 

─新中期経営計画「イノベーション21」が始まりました。繊維事業としては、どのような方針で取り組まれますか。

繊維事業は本当の意味でニューステージに立てたといえます。次の課題はグループ連携による新市場・新事業の開拓です。例えば現在、グループ連携戦略会議とグループ技術開発会議を継続的に実施しています。グループ連携戦略会議は、各事業会社の営業トップで構成し、グループ技術開発会議は事業会社の技術開発担当で構成しています。会議での議論を通じて国内外で各事業会社の経営資源、販路の共有が目的ですが、例えばダイワボウノイとダイワボウポリテックが介護関連商品の開発・販売で連携するなどグループ協業の効果も出ています。そして、こうした取り組みの舞台のひとつとなるのが大和紡績香港です。すでにダイワボウノイ、ダイワボウプログレス、ダイワボウポリテックが大和紡績香港にスタッフを派遣しており、事業会社の枠を越えた連携に取り組んでいます。実際にカートリッジフィルターや不織布製品、コスメ製品などを香港経由で販売できるような商談も寄せられ始めました。さらにインドネシア子会社で生産する商品も香港を通じて米国などに輸出することも狙いの一つです。

 

─事業会社の枠を越えて販路の共有化が進むわけですね。

例えば防炎関連の商品は、各事業会社が取り扱っています。そこでグループ全体で商品群をまとめなおし、ダイワボウグループとして提案することを進めています。フィルターも同様ですね。震災復興関連でも放射性物質の除染に貢献できるような商品が可能になるでしょう。

 

─グループ全体での開発も加速するわけですか。

産学共同研究も従来は各事業会社が行ってきました。しかし、昨年11月に大和紡績の直轄組織として技術戦略グループを立ち上げました。ここで各事業が技術面の情報交換を行い、産学共同研究の成果も含めて水平展開することを目指しています。さらに今後は、次の段階に進む必要もあるでしょう。そこでグループ連携戦略会議とグループ技術開発会議を一体化することも検討しています。そうすることでニーズとシーズの擦り合わせを今まで以上に進めることが狙いです。

 

─中期経営計画最終年度となる2015年3月期の目標をお聞かせください。

2012年3月期の実績は、繊維事業が売上高約600億円、その他事業の中の生活サービス事業が約40億円の合計約640億円でした。3年後に生活サービス事業は現状維持として、繊維事業は720億円にまで伸ばす計画です。現状から120億円の増収計画となるわけですが、まずは現在約40億円の海外売上高を80億円まで拡大させたい。これで増収分の3分の1。残りの3分の2は日本国内の事業で拡大させることになります。そのためにも事業会社連携による事業拡大が重要になるといえるでしょう。

「地域密着」の強みを発揮し新たなビジネスにも果敢に挑戦

 

ダイワボウ情報システム(DIS)は会社創立30周年を前に、売上高4,000億円を達成するなど日本経済が並べて厳しい環境下で呻吟した中で大きな成果をあげました。ダイワボウホールディングスの中核を担うITインフラ流通事業が新中期経営計画「イノベーション21」をどう牽引していくのか、DISの社長で当社取締役専務執行役員の野上義博氏にお聞きしました。

─前期はDISが念願の年商4,000億円を達成するなど健闘が目立ちました。

創立30周年を迎えるにあたって売上高4,000億円を達成するとともに、パソコンとサーバー合計で200万台を超えて218万台を販売するなど数値的にもひとつの区切りになった年でした。取り巻く環境には厳しいものがありましたが、従来から進めてきた「地域密着」「顧客第一主義」という基本戦略を徹底した結果だと受け止めています。これもひとえに、諸先輩が血の滲むようなご努力で発展の礎を築いていただいたからこそであり、また全社員の努力の積み重ね、そして何よりも取引先・関係先の皆様のご支援の賜物と深謝しております。
ただ一方で30周年という年数も4,000億円という数字もひとつの通過点、未来に向けたワンステップであるととらえています。つまり当面の目標である5,000億円はもちろん、今後10年先、20年先に向けて絶えず「成長」と「挑戦」を繰り返しながら事業拡大することが企業の根幹だからです。

 

─新中期経営計画がスタートしました。その中核を担うITインフラ流通事業及びDISが果たすべき役割をお聞かせ下さい。

いうまでもなく中核となるITインフラ流通事業を担う会社として、当社の責任は非常に大きいものと考えています。既存の取り組みを確実に実行しつつ、新たな取り組みにも果敢にチャレンジして、何よりも約束した計画数値を達成することが、最大の使命と考えています。
今期の重点施策は①既存事業の強化②注力事業の育成・拡大③構造改革の3点です。既存事業の強化の一環となる販売重点施策として、パソコン、サーバーはともに昨年実績を上回る販売台数を目標として拡販に取り組みます。更に重点的に販売に取り組む商品群を「重点ビジネスカテゴリ」として目標を設定しており、前年以上の伸長を目指しています。また構造改革の一環として情報システムの強化に取り組みますが、概要が固まり作業がスタートしています。
そして基本戦略として従来からの「地域密着」「顧客第一主義」という主軸はぶれず、新たな取り組み・企画にも挑戦します。そのための第一歩として先に、「営業企画部」という部署を創設しています。従来にない新たなチャレンジ、ビジネスモデルの確立はこの営業企画部がリードしていきます。同部は新しい取り組みを実際に手掛けるなど、トライアンドエラーを繰り返しつつ成果につなげていければと考えています。DISはこれまでのように、単に製品をお届けするという役割だけではなく、WiMAXのような通信サービスやクラウドビジネスなども包含した新たな分野に挑戦していきます。新しいビジネスへの挑戦は、今やらなければ近い将来必ず後悔することになりますし、2~3年後更に大きくステップアップするための準備は今から始めておく必要があります。

 

─創立30周年を迎え、あらためてDISの強さや特徴、更には今後の針路などをご説明下さい。

現在当社グループは、全国津々浦々に広がる約90の営業拠点と15ヵ所の物流拠点を軸に、地域密着型のネットワークを構築しています。この緻密なネットワークを通して、国内外800社以上のメーカーと17,000社を超す販売店様と取引しています。地域に多数の営業拠点を設けることは、確かにリスクもありまた時代遅れのようにみられることもありました。しかし先の大震災に際して、同業他社やメーカーよりも格段の迅速さで復旧支援活動ができたように、全国の営業・物流拠点網を生かした地域密着型のビジネスは決して間違ってはいないと意を強くしています。これこそが、当社が30年かけて創り上げてきた最大の強みです。
IT業界の変化は激しく、パソコンを始めとするIT関連機器の普及に伴ってコモディティ化、低価格化が一段と進み、業界内の競争も年々激化しています。一方で技術革新は急速に進展し、当社が取り扱う商品の高度化・複雑化は飛躍的なスピードで進化しています。更にスマートフォンの普及やクラウドコンピューティング化の流れなどで新しい市場が台頭するとともに、通信インフラの高速化も加速度的に進んでいます。こういった変容する情報化社会にあって、当社は将来にわたり持続的、長期的に発展していくためにも、グループ全体で既存の取り組みに加えて新しいビジネスに果敢にチャレンジし、更なる成長を図りたいと考えています。

3つの基本戦略で海外売上高比率を40%に

 

昨年からダイワボウグループに加わったオーエム製作所は、新中期経営計画「イノベーション21」達成に向けて、「グローバル市場での業容拡大」「次世代商品の開発」「モノづくり力の強化」という3つの基本戦略を推進します。グループ連携を生かし、海外売上高比率40%を目指して、製販ともにグローバル展開を加速することになります。オーエム製作所社長で当社取締役専務執行役員の山村英司氏に今後の方向性をお聞きしました。

─ダイワボウグループに加わって1年が経ちました。

ダイワボウグループに加わったことで海外での事業拡大に向けた連携が可能になったことが大きな成果です。3月まで2カ年の事業計画を実行してきましたが、ダイワボウグループに入ったことで事業展開のスピードが、とくに海外で速まってきました。


─ダイワボウグループの新中期経営計画が始まりました。産業機械事業としては、どのような方針で臨まれますか。

基本方針は3つ。「グローバル市場での業容拡大」「次世代商品の開発」「モノづくり力の強化」です。グローバル市場での業容拡大では、2010年に立ち上げた台湾現地法人、台湾オーエムで新工場の建設に着手します。12月には竣工予定で、1㍍60㌢径クラスの立旋盤を生産し、中国、新興国、そして米国への輸出を行います。日本人技術者も常駐させました。また、新興国向けの商品開発も大きなテーマ。例えばインドネシアやタイでは人件費が上昇しており、現在は手作業で行っている食品や薬品の包装作業も、いずれ機械化のニーズが高まってくるでしょう。そこで自動包装機械の需要が出てくるはずです。こうした現地のニーズに対応した機械の開発と提案を進めます。当然、現地生産も視野に入ってくるでしょう。すでに日本の機械メーカーが、これら地域に進出する動きを強めていますから、当社としても後れを取るわけにはいきません。
また、工作機械にしても自動包装機械にしてもサービス体制の充実が欠かせませんので、海外での現地営業体制およびアフターサービス体制を拡充します。現在、米国には現地法人のO-M(USA)があり、工作機械の販売を行っていますが、人員を増強し、サービス体制を強化しました。中国は上海に駐在員事務所がありますが、こちらも現地法人化に着手しました。法人化することで現地での営業活動とサービス活動が可能になります。

 

─「次世代商品の開発」では。

自社にない商品ラインアップを拡充する必要があります。とくに自動包装機械は、ユーザー企業が工場のラインを一貫システムとして導入するケースが増えており、全工程の機種をそろえていないと提案が難しい案件が増えてきました。そうなると他社との連携が必要になるわけで、場合によっては海外メーカーとの連携もあり得るでしょう。M&Aも含めて取り組む必要があります。
同時に、既存商品の高付加価値化も欠かせません。産学共同研究も進め、大学などが開発した技術を実用化したい。例えば工作機械では自動診断システムなど新しい機能を追加した機種の開発も進めており、こちらはダイワボウ情報システム(DIS)とコラボレーションして開発したプログラムを搭載した機種を、今年の展示会で披露する予定です。

 

─「モノづくり力の強化」は、オーエム製作所の持ち味とも言える部分ですね。

高品質の機械を生産するためには、品質管理がもっとも大切ですので、この部分を一段と強化します。海外生産が増えれば、その重要性はますます高まります。また、機械は売りっぱなしというわけにはいきません。グローバルなアフターサービスが可能な体制を充実させなければなりません。もちろん、コストダウンはメーカーにとってもっとも重要な要素ですから、海外調達の更なる拡大も必要でしょう。また、工作機械などは“部品待ち、原料待ち”によるタイムロスが多い分野ですから、リードタイム短縮に取り組む必要があります。そこでDISグループを通じて新生産管理システムを開発、自社工場に導入しました。こういった面でもダイワボウグループに加わった相乗効果だということができます。

 

─中期経営計画の最終年度となる2015年3月期の目標をお聞かせください。

売上高に占める海外比率を伸ばすことです。現在は約20%ですが、これを中期経営計画最終年度には40%にすることを目指します。残念ながら工作機械、自動包装機械ともに国内市場は縮小が避けられません。多くの製造業が海外進出を加速させているからです。当社としても、これらユーザー企業の動きに対応し、海外に進出していくことが重要です。少なくとも国内では「OM」のブランド力があります。常に新しい技術を出し続けていることをアピールし、ブランド力を海外にも広げていきたいですね。そのために米国では、実機を展示するショールームを開設します。中国やインドネシアも同様。とくに中国は今年、北京で開催される国際展示会に自動包装機械の実機を出品します。瀋陽で開かれる工作機械の展示会にも積極的に参加する計画です。これらの国でもOMのブランド力を高めてきたいと考えています。