ダイワボウホールディングスは2016年4月から、3カ年中期経営計画「イノベーション21」第二次計画の2年目に入りました。初年度である2016年3月期は、大幅な増益を達成するなど順調に計画が進捗しています。野上義博社長がイノベーション21第二次計画初年度の総括と、中期経営計画で目指す「グローバルな成長市場・地域での事業領域の拡大」「顧客価値創造型企業への進化」「新たなステージに挑戦できるグローバル人材の育成」の実行に向けた、折返し地点となる今期の課題や戦略について語ります。

 

 

─ 中期経営計画「イノベーション21」第2次計画の初年度である2016年3月期の業績は連結売上高5,785億円(前期比2.2%増)、営業利益99億円(同20.2%増)、経常利益97億円(同21.5%増)、純利益53億円(同7.8%増)となりました。前期の成果をどのように分析されていますか。

前期の日本経済は、中国をはじめ新興国経済の成長が鈍り海外景気が下振れする懸念から輸出や生産がやや落ち込みましたが、国内企業の積極的な設備投資、雇用の改善やインバウンド需要などによって堅調に推移しました。そのような中で、当社は中期経営計画「イノベーション21」第二次計画初年度の業績は増収増益となり、計画を達成することができました。基本方針に沿った事業展開によって、確実に利益を確保できる体制になったことがその要因として挙げることができます。

ITインフラ流通事業は法人向け市場で地域密着の営業活動を徹底したことにより、首都圏を中心とした民間企業や文教市場向けの実績が拡大しました。またタブレット、スマートフォンなどのモバイルデバイスをはじめ、周辺機器やソフトウェアなどの需要拡大に加え、旧OS搭載PCの更新需要の反動から前年割れが続いたPC販売も徐々に回復が見られました。

繊維事業は、やはり衛材用途が好調です。除菌関連、フェイスマスクなどのコスメ向け不織布や衣料用機能レーヨン原綿の販売が拡大しました。衣料製品部門では大和紡績香港を起点とした欧米向けインナー製品の販売や、国内量販店・専門店向けのカジュアル製品の販売が好調に推移しました。産業資材事業でも、フィルター製品や生活資材向けの帆布の売り上げが伸びました。

産業機械事業は、主力の立旋盤は国内航空機分野が引き続き堅調でしたが、オイル・ガス分野は原油価格の下落により米国を中心に売り上げが減少しました。中国市場でも現地景気の後退によって全般的に低迷しました。自動機械については国内外の展示会へ積極的に最新機器を出展するなど販売活動に力を入れたことで、医療品分野や食品・製菓分野向けの製品受注が増えました。
 

 

─ 今期は中期経営計画「イノベーション21」第二次計画の2年目となります。課題や基本戦略についてお伺いします。

計画第2年度の事業方針として、「戦略的なパートナーとの協業とサプライチェーンの構築によるグローバルな成長市場・地域での事業領域の拡大」「市場創造型マーケティングやグループの優位性のある独自機能を強化した顧客価値創造型企業への進化」「変革突破力、価値創造力、コミュニケーション力を備え、成長戦略を切り拓き、新たなステージに挑戦できるグローバル人材の育成」を掲げています。

事業別の施策として、ITインフラ流通事業は、マルチベンダー・ワンストップサービスなどの従来の強みを生かし、PC市場で端末販売にこだわることで既存事業をさらに拡大していきます。スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスは、個人市場のみならず、法人市場でのワークスタイル変革を訴求することで新たな需要を創造していきます。7月には、ユーザー体験を重視したショールーム「Customer Experience Center & ExecutiveBriefing Room(総称:CEC)」をDIS東京支社1階に開設しました。高度化・多様化が進むIT環境において、メーカーや販売パートナーが単独で総合的なITソリューションを提供することは困難になりつつあります。DISは販売パートナーやメーカーが持つ技術や付加価値を融合させ、複合的なソリューションを提供します。今後のIoT環境の取り込みも視野に入れ、中長期的なビジネスモデルの創出と新たな市場の開拓を進めていきます。 また、販売店との強固なパートナーシップをさらに深め、クラウドや教育ICT化などの成長市場をターゲットに販売シェアの拡大を目指します。

繊維事業については、合繊部門では衛生材分野の需要が継続しています。いかに素早くマーケットニーズを正確に捉え、対応するかが重要です。そのためには外部企業とのアライアンスを積極的に進め、マーケティングと連動した開発を加速させなければなりません。このほど、複合繊維の製造設備増強を行うことも決定しました。積極投資を進める国内外の生産拠点をフル稼働させ、当社の強みである繊維素材の開発から最終製品まで一貫した生産販売体制で、アジア市場における事業拡大に取り組みます。また、レーヨン部門でもグループ協業体制による機能性レーヨンの開発強化と顧客との取り組みによる川下戦略の展開によって事業領域の拡大を図ります。機能資材部門では、アセアン地域における地産地消ビジネスの展開を推進するとともに、生活・環境などの成長分野への販売を強化します。一方、衣料製品部門は、フタロシアニン関連製品や消臭羽毛などの独自素材の開発やグループ各社が保有する機能性素材を活用した新市場・新商品の創出を進めます。加えて海外生産拠点の再編と大和紡績香港を中心とした海外販売の強化を推進し、収益基盤の確立に取り組みます。

産業機械事業の工作機械部門では長岡工場の生産体制見直しと後継者育成による現場力向上を推進し、品質の安定化とコスト削減を図り、収益拡大に取り組みます。また、グローバル展開を加速させるために、成長が見込める北米地域で昨年設立した現地販売会社のJapan Machine Tools Midwest, LLCとの連携も強化します。今年9月にはシカゴで開催される国際見本市「IMTS2016」に主力の立旋盤を出展するなど、現地での販売とサービス活動を展開し、重点市場である航空機分野への販売拡大に取り組みます。自動機械部門では引き続き、国内外の展示会へ積極的に出展し自社ブランドの訴求と医薬品・食品・製菓分野を中心に販売を拡大してまいります。
 

 

─ 国内外ともにも環境の変化が一段と激しくなってきました。

世界経済は、英国のEU離脱の国民投票の結果を受けた市場の動揺こそ収束しつつあるものの、依然として先行きは不透明な状況にあります。当社は変化の激しい環境にスピーディーに対応し、時代をリードする先駆性を持った企業グループ体制を目指しています。そのためにも、今後とも株主、取引先などステークホルダーの皆様には、引き続きご指導とご支援をお願いいたします。