このほどオーエム製作所の社長に佐脇祐二氏、ダイワボウレーヨンの社長に福嶋一成氏がそれぞれ就任しました。新社長として新たな成長への戦略と意気込みを語っていただきました。

─ ダイワボウレーヨンの強みをどのように分析されていますか。
レーヨンの需要が地球規模で拡大していることです。世界の人口は増加を続けていますが、天然繊維の中心である綿花の作付面積は他の農作物栽培との兼ね合いから生産の拡大に限界があります。このためレーヨンの需要が拡大する。つまり、レーヨンはいまなお“成長産業”であるということです。一方、国内市場に目を向けると人口減少による市場縮小、生産設備の老朽化と原燃料などのコスト高など様々な課題があります。また、現在の世界のレーヨン生産量は年間500万トンとも言われていますが、当社の生産は年産約2万5000トン。つまり全生産量の0.5%しかシェアがありません。こうした中で、どうやって事業を継続し成長させていくのか。そのためには差別化しかありません。他社にまねのできない機能性レーヨンや差別化レーヨンの開発、生産に取り組んできました。特にこの数年、強調しているのは多品種・小ロット・短納期への要望に素早く対応できる生産体制に整備を進めてきました。
そうした中、伸びているのが不織布用途です。制汗シートやフェイスマスクなどスパンレースの需要が拡大し、原綿もフル生産が続いています。こうした用途では最終製品で求められる機能や品質を原料であるファイバーから工夫していくことが重要となります。
─ 引き続き開発が重要になるわけですね。
従来は益田工場で勤務していた開発担当者を複数名、大阪に常駐させ、ユーザーと直接コミュニケーションを取り、生のニーズを的確に捉える顧客対応ができるようにしました。また、益田工場にはスパンレースなどのサンプル製造設備がありますので、様々な原綿による試作品をユーザーに提案しています。ファイバーからの開発ができるというのは、大変な強みなのです。
─ 海外市場への取り組みをお聞かせください。
工場の生産設備をフル稼働させ、生産効率を高めることが重要ですが、そのためには海外市場でのさらなる拡販が必要です。海外販売比率は全販売量の2~3割を目標にしています。現在、防炎レーヨンを中心に製品を輸出していますが、今後は機能性レーヨンの輸出にも力を入れていきます。例えば、衛材分野で中国向けのフェイスマスク用原綿の販売が伸びています。ダイワボウポリテックや大和紡績香港との連携が大きな効果を上げ始めました。また、米国市場では水解紙への注目が高まっており、そこでも当社の原綿開発力をもって取り組んでいます。
─ 不織布以外の用途はいかがですか。
これまで機能レーヨンを進化させることで成功してきたわけですから、今後もどれだけニーズのある商品を作ることができるかがポイントになります。そのために顧客との取り組みがますます重要になります。また、ダイワボウグループとしてグループ内の連携も強力に推進します。ダイワボウポリテックやダイワボウノイだけでなくダイワボウプログレスと連携することで資材用途の開拓も進めたい。すでにヒ素吸着レーヨンの開発も進めています。アジアでは天然ヒ素鉱のため地下水のヒ素濃度が高い地域が少なくありません。そういった地域の水資源活用で貢献できる素材です。さらに、ダイワボウ情報システムやオーエム製作所との協業の可能性も常に探っています。ビジネスチャンスは様々なところにあるはずです。
─ 今後の抱負をお聞かせください。
経営者からパート社員に至るまで同じ考え方を共有できる企業となることが目標。つまり、一つのチームとして事業に取り組むことです。そのためには常にトップがメッセージを発することが大切でしょう。また、製造設備を更新・維持していくことも欠かせません。紡績会社で原料から生産しているところはほとんどありません。その意味では当社のレーヨンはダイワボウポリテックのポリプロピレンと並んで大きなリソースなのです。これをどのように生かすかがダイワボウグループの繊維事業にとっては重要ですし、そこにこそ当社の役割があると信じています。
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2016.07 THE Daiwabo 「新社長登場」 (512KB)