中計達成へラストスパート

“アベノミクス”によって“失われた20年”からの脱却に向けた兆しが見えた2013年も終わり、その真価が問われる2014年が始まりました。ダイワボウグループにとっても今年は4月から中期経営計画「イノベーション21」最終年度がスタートする重要な年となります。阪口政明社長に2014年の展望と今後の方針について語っていただきました。

 

 

─ あけましておめでとうございます。
2014年が始まりましたが、今年はどういった年になるとお考えですか。

あけましておめでとうございます。昨年を振り返ると、政権交代やいわゆる“アベノミクス”で株高・円安になるなど、これまでの世の中の流れが大きく変わった年だったといえます。そうした中でダイワボウグループにとっては、主力3事業のうち、繊維事業にとって従来の円高を背景に生産を海外にシフトしていたものが逆に円安に振れたことに加え、アセアン諸国の経済発展で現地の人件費が急上昇するなど逆風の1年でした。しかし、ITインフラ流通事業は官公庁や教育機関向けが好調だったことや、「Windows XP」のサポート終了を見越したPC買い替え特需もあり、円安による調達コスト増をカバーしています。産業機械事業にとっても円安が追い風になっています。とくに立旋盤は米国でシェールガスなどエネルギー関連、そして航空機関連の需要が旺盛です。台湾では子会社の台湾オーエムでの立旋盤生産と販売を開始しました。
2014年については、景気は全体としては回復がより鮮明になると思います。懸案だった欧州の経済危機も最悪期は脱しつつあるといえます。日本も4月に消費税引き上げが控えていますが、従来の増税と異なり、国民もある程度は納得しているような感じがあります。景気が回復する中で国民の消費意欲も高まりつつあります。例えば昨年からの株高で、株式を所有しているシニア層の消費が改善しています。一部で起こっている旅行ブームやグルメブームなどが象徴ですね。そういった動きが国民全体に広がれば、消費の選択肢も増え、新しい需要を生み出すことにつながります。
 

 

─ ダイワボウグループにとっては4月から中期経営計画の最終年度が始まります。

3月で終わる中期計画2年目は売上高こそ順調でしたが、利益面は不満の残る内容となりそうです。とくに繊維事業の進捗が遅れており、その意味で14年度は売上高の拡大と合わせて、収益構造を改革することが重要になります。“脱コモディティ”を進めると同時に国際マーケットにおけるソリューション型ビジネスへの転換を進めます。これまで事業のグローバル化を進めてきましたが、最適地生産・最適地販売、そして最適商品を最適時で最適市場に投入するという基本方針は変わりません。一極集中のリスクも考慮し、事業の多様化と多国籍化を進めます。それこそ“国際マーケット・イン”をいま以上に推進するということです。
ITインフラ流通事業は、従来のハード製品の卸売業からソリューション型ディストリビューターへの転換を進めなければなりません。そのためにシステム投資も行いました。現在取り組んでいる教育分野におけるICT活用実証プロジェクトも成功させなければなりません。また、全国87拠点による地域密着営業も引き続き力を入れます。その点で今後は物流面の改革が重要になってきます。
繊維事業に関してはコモディティ品ではなく原料から差別化した高付加価値商品へのシフトを進めます。主要6事業会社が持つ特殊素材を活用し合うことで新しい市場を創出することがポイントになります。こうした取り組みを海外でも実施しなければなりませんから、香港法人である大和紡績香港の役割も大きくなります。インドネシアから米国、あるいはアセアン各国への販売といった形を増やし収益率を上げる必要があります。適地生産と適正価格の追求はメーカーの使命ですが、今後は適地販売も大きな役割になっています。
産業機械事業は、当面は立旋盤を中心に工作機械の米国市場での好調に期待が持てます。課題は自動包装機です。これらを早く海外市場にも販売できるようにしなければなりません。また、ITインフラ流通事業と連携して高機能機種の開発を進めることも重要です。一部では成果も出始めています。
観光、食品など主力3事業外の事業の底上げも大きなテーマです。観光事業にしろ、食品事業にしろ、やはりもっと国際化を進める必要があります。いずれにしても中期計画最終年度となる今年は、各事業とも計画達成に向けてラストスパートをかけることが重要になります。
 

 

─ 中期経営計画では「シナジー効果による新市場・新事業の創出」「グローバル戦略の推進」「独自性と差別化の追求によるコーポレートブランドの強化」を基本方針に掲げてきました。ここまでの成果をどのように評価していますか。

グループ協業やグローバル戦略には一定の成果が上がっていると評価しています。課題はやはりコーポレートブランドの強化です。もともとこれは一朝一夕に実現できるようなテーマではありません。当社はBtoBの事業が中心ですから、よりハードルは高いわけです。しかし、それだけに取り組む価値、そして必要があります。まずは各事業が、それぞれの事業領域で「ダイワボウ」のブランドを浸透させていく必要があります。各分野でトップの地位を築くことです。その“点”が“線”となり、いずれ“面”へとつながっていきます。ですから、このテーマは次期中期計画でも継続して取り組んでまいりますので、引き続きステークホルダーの皆様のご指導ご支援をお願いいたします。