ダイワボウ情報システムが推進する「DIS School Innovation Project」

 

昨年12月7日
熊本県山江村立山田小学校で開かれた
公開研究会より

ダイワボウ情報システム株式会社(DIS)は、教育現場でのICT(情報通信技術)導入・活用を推進する実証研究「DIS School Innovation Project」をスタートしました。

21世紀はデジタル社会です。子供たちにこのデジタル社会に求められる基礎能力をいかに取得させるかが、喫緊の課題となっており、これを支援する取り組みです。

具体的な取り組み課題や現在までの進捗と今後の計画などについて、同社の豊田惠造取締役と土方祥吾マネージャーに聞きました。

 

未来への社会貢献活動として

 

文部科学省は2011年4月に「教育の情報化ビジョン」を取りまとめました。教育の情報化に関する総合的な推進方策として、2020年までに小中高の児童・生徒に対し1人1台の情報端末を整備していくというものです。

当社の予測では、電子黒板で114万台、1250万台のパソコンが導入されるほか、教科書や教材がデジタル化され、クラウド・コンピューティング技術も活用されます。学びの場が変わり、文教市場が大きな広がりをみせると予想されます。

当社は中期的な次のステップとして売上高5,000億円を目指していますが、このプロジェクトが重要な役割を担うことは言うまでもないことです。成長する文教市場を開拓していく所存です。 すでに韓国では情報化が進み、学校と塾とが連動し、学校でわからなかったことを塾で把握して教えるといった個別学習の取り組みが生徒のスキルアップの向上に役立っています。今回の教育の情報化もそうした対応の一環ですが、ただ、情報機器といったハードを導入するだけでは成果は出ません。教師がどう活用するのか。児童・生徒の理解度はどうか。実際の教育現場で実証研究してわかることも多い。そうした情報を現場で収集し、今後に活かすのが本プロジェクトの目的です。

ICTによる新しい授業、協働教育(学び合い)の手法などを産学官が連携して作り上げていきたいと思います。21世紀を生きる子供たちを育むために、学力の向上と、子供たちが教え合う授業やコミュニケーションを通して、21世紀型スキルを定着していかなければなりません。このプロジェクトは未来に向けた大きな社会貢献につながると自負しています。

 

31~32校で実証研究を開始予定

 

「DIS School Innovat ion Project」は国語・算数・理科・社会・英語を、パソコンをツールにして学ぶ普通教室での教科指導におけるICT活用推進実証研究です。全国の教育委員会に公募し、昨年11月末までに23自治体・37校が応募されました。最終的に20自治体・31 ~32校(小学校を基本に一部小中一貫校)に決定する予定です。

1校に1クラス分の学習者用タブレットパソコン(東芝CM1)、教師用ノートパソコン、授業支援ソフト、可動式タブレットパソコン充電保管カート、無線LANアクセスポイント、デジタル教材、デジタル絵本作成ソフト、児童向け表計算・文書作成・プレゼンテーションソフトなどを提供します。また、地域パートナーと連携し、学校及び教員へのサポートも行っていきます。さらに大学教授など業界有識者が、教育工学の観点から実証研究アドバイザリーとして関わり、情報分析・解析、レポーティングなども支援頂きます。

実証研究校では、児童が1人1台端末によるフューチャースクール型授業を実施したり、ペアまたは班やグループで端末を活用した学習など、あらゆる活用シーンを想定しています。また、公開授業や研究会など、学校や教育委員会と相談しながら地域ごとに様々な形で開催する予定です。

こうした学校、教育委員会、有識者と、メーカー、販売店、協力パートナーとのアライアンス体制を構築し、約2年半の実証研究の成果・事業モデルの発信、フィードバックを行うことで、全国での教育現場へのICT導入を推進し、今後の製品開発、サポート向上を図っていきます。

 

協業ベンダーから期待の声

 

学校教育専用タブレットPCを提供

当社は学校教育に特化した初めてのタブレットPC端末「CM1」を同プロジェクトに提供しています。実際の使用環境を考慮した工夫を施しています。端末全体をラバーコーティングしており、耐衝撃性に優れた点や、持ち運びに便利な取っ手を付けた点のほか、キーボード形態としても使用でき、低学年から高学年への学習課程に1台で対応できることも特徴です。

“スクールイノベーション”という標語は、学校現場に対しICTの有効活用を提案してイノベーションを起こしていくために、当社とDISさんが共同で作成したテーマです。ICTを導入した教育の体験セミナーを共同で実施するなど、連携を深めています。

ICTは、楽しく授業を受けながら、学習意欲が向上する効果が期待できます。ICTの活用が、教育現場の課題や要望をいかに解決できるかを今回の実証研究で明確にし、今後のハード開発につなげたいと考えています。

 

 

「個に応じた学び」対応ソフトも

「DIS School Innovat ion Project」において、当社は教科学習ソフト(教材名:「学習探険ナビ」「デジタル小テスト・ドリル」)ならびに授業支援ソフト(教材名:「授業支援ナビ」)を提供し、授業場面でのICT活用を支援します。教育現場におけるICT化の意義は、従来と異なる授業と学びの環境が整えられ子どもたちがデジタルの特性を活かした学びができることです。特に当社が提供している「デジタル小テスト・ドリル」は、授業での学びの定着確認とさらなる習熟ができ、今後深まりゆく『個に応じた学び』に対応したソフトになります。

教育現場におけるICT化の目指すものはICT活用を通じた学力向上と考えています。意義深い今回のプロジェクトの成果に貢献できればと存じます。

 

 

音声、動画も使えるデジタル教科書

今、教科書がデジタルに変わろうとしています。媒体がデジタルに変わることにより、データ量が飛躍的に増加します。今までは紙面に限りがあり、掲載できなかった文章・写真・図などが、容量の許す限り掲載できるようになります。伝達手段として、音声や動画も使えるようになり、学習内容が理解しやすくなります。また、インターネットを使って調べたり、遠くの人と交流したりすることもできます。

これは障害を持った児童には、画期的なことです。デジタル教科書を使った授業では、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)の児童の集中力が増しているという報告も相次いでいます。我々の願いは、ひとりでも多くの児童に、様々な手段で学習する機会が与えられることです。
「DIS School Innovation Project」が、我々の願いをかなえてくれることを期待しています。