ハイブリッド企業としてベクトルを合わせ 新しい価値創造

■強みを生かしながら顧客目線で事業開発

──あけましておめでとうございます。昨年は厳しい経済環境でした。2010年はどのような1年になると見通されていますか。

復調傾向にあるアジア向け輸出など一部には景気回復の兆しが見えますが、先行きを見通すのは非常に難しい時代です。今が底でこれから回復が期待できるのか、逆にさらに下落するのかさえも分らないというのが正直なところです。いずれにせよ、我慢していれば2008年秋以前の経済状態に戻ると考えてはいけません。
その中で企業としては当面、健全経営を優先しなければなりませんが、将来の成長の芽まで摘んではなりません。つまり、成長とリスクのバランスをとりながら、事業の質を高めいいくことがこういう時代には必要です。
そのためにも、まずは自己の強みをさらに強化し、市場での優位性を高めていくことです。次に顧客目線に立った商品開発、事業展開が重要となります。3番目は、当社が果たした経営統合を基に、それぞれ自主性を持ちながら刺激しあって常識にとらわれることなく、新たな事業領域を共に創造していくことも必要です。それが当社の進めるハイブリッド経営です。

 

──優位性を高めるうえでダイワボウグループの強みとは何でしょうか。

DISは国内最大級の独立系ITディストリビューターであり、繊維は各種の機能素材を持つ点が強みです。
そして、それぞれが顧客との継続的な取り組みを基本に、機能素材や即納体制などの優位性に一層、磨きを掛けることが、当社へ商流を呼び込むことになると考えています。
DISは豊富な品ぞろえと全国90カ所の販売拠点網、約17,000社の販売パートナーを生かした地域密着型営業が強みです。取扱品は150万アイテムを超え、世界中のメーカーのパソコン・ソフトウェア・周辺機器からサプライ商品までを扱います。
また、全国に配置した支店網と物流センター、電子商取引を組み合わせた即納体制や販売店支援システムも構築し、シェアも拡大していますが、単に流通を担うだけでなく、メーカーや販売店に代ってソフトやメモリーをカスタマイズして提供しています。こうした顧客目線に立ったビジネスをさらに強化していきます。

 

■末端ニーズをモノ作りに 新たな価値観の創造を

──菅野社長がおっしゃる顧客目線とは今までと、どこが違うのでしょうか。

従来は顧客と言っても直接の販売先だけを指していたのではないでしょうか。しかし、本当はどんな商品やサービスでもその要否を決めるのは、最終のユーザーです。最終ユーザーがどのようなことを求めているのかが分かれば、その担当者は可能な限り知恵を絞るはずです。こうした考え方の変化が仕事の進化を促すのです。

 

──顧客目線であることが新たな事業展開にもつながるということでしょうか。

従来の延長線で、今まで世の中にないものをイメージできるでしょうか。新しい価値というものは異なる視点が融合することで生まれます。当社は昨年7月、ITと繊維のコラボレーションというハイブリッド型企業として生まれ変わりましたが、それによって新たな発想を生み、既存事業の再構成と事業領域の拡大が可能と考えています。
また、新事業というものはたびたび新規の全くカテゴリーが異なる人たちにより新たなサービスとして提供されます。つまり、重要なのは固定観念を捨てて行動することです。
それに対して会社はヒト・モノ・カネでサポートする。ここでの判断基準は顧客への新たな価値の提供という一点になります。それが「ブルー・オーシャン」戦略のような競争相手のいない静かな海原を真っ先に見つけ出すことにもつながっていくと思います。

 

■お互いに刺激しあい事業を興す意識を持て

──顧客目線と言っても、なかなか変えるのは簡単ではありません。

時代が大きく変化していることを念頭に、自ら変わる勇気を持つことです。そして創意工夫と自主性を持ち、自らが意思決定することが必要です。その仕事が成功するにせよ失敗するにせよ、自ら決める。また自らが変わる、その勇気が最終的に企業を変えることにつながります。
このような厳しい経済環境下だからこそ、個々人が新たな事業を興すという意識を持つことが必要です。慎重に検証を加えるのは当然ですが、従来の常識にとらわれず、障害があってもそれを乗り越え、粘り強く新事業が成就するまでやり抜くことです。こういう意識をグループ全体に醸成していくのが私の役目でもあります。
そして、新たな時代に向け、ハイブリッド経営にふさわしく、統合会社間の交流を活発化し互いに刺激しあい、困難な時代を乗り切り、明るい未来を切り開いていきたいと考えています。