ダイワボウホールディングスは、今期から新たに工作機械・自動機メーカーのオーエム製作所をグループに加え、産業機械事業による「産業インフラ」、I T インフラ流通事業による「I T インフラ」、繊維事業による「生活インフラ」の3領域を主要事業領域として事業を展開してまいります。3事業領域が相乗効果を発揮しながら、新しいダイワボウグループを創造するためには、何が必要なのでしょうか。今回は各事業の現場で活躍する中堅幹部の皆さんにお集まりいただき、さらに強靭なダイワボウグループを構築するための秘策を語り合っていただきました。

参加者

ダイワボウホールディングス
山村 芳郎 取締役常務執行役員 福嶋 一成 戦略事業推進室長

オーエム製作所
常石 茂樹 執行役員工機事業部副事業部長 水口 一生 工機事業部海外営業部長
平岡 弘行 自動機事業部営業部長

ダイワボウ情報システム
松本 裕之 首都圏営業本部長
山下 隆生 中四国・九州営業本部/中四国営業部長兼広島支店長

ダイワボウプログレス
岩城 宏之 産業資材営業部長

ダイワボウノイ
松田 憲佳 機能製品部長

 

 

■山村取締役(以下、敬称略)
本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。
まずは自己紹介を兼ねて、それぞれ担当事業についておうかがいします。まず、新たにグループに加わったオーエム製作所の皆さんからお願いします。

■常石執行役員(以下、敬称略)
工機事業部では、当社の主力の大型立旋盤を扱っています。発電所などエネルギー関連プラントの構造部品製造に使われています。
わたしは国内営業を担当しているのですが、おかげさまで建設機械や船舶・航空機タービン関連の需要が活発化してきたことで受注も増えてくるなど好調を維持しています。

 

 

■水口部長(以下、敬称略)
皆さんにオーエム製作所が作る製品をイメージしていただきやすくするために、立旋盤の大きさや重さについてちょっとご説明します。小さい機種でもおおよそですが、横幅×奥行き×高さが4~5メートル×6~7メートル×4~5メートルで、製品の重量が15トンから20トンになります。大きな機械ではその2~3倍のサイズ、重量が150~200トンを優に超えるものまであります。これだけ大型の機械となると当然、納期は長くなりますし、かさばりますので完成品を在庫するといったことも不可能です。国内では80%前後のシェアを持つ大型立旋盤ですが、海外での認知度は十分ではありません。しかも韓国・台湾メーカーの追い上げもある。
また、工作機械の輸出には安全保障貿易管理のために経済産業省の認可が必要です。競合に打ち勝つためには、コスト競争力を付け、納期の短縮化を図るとともに、機能面での充実が重要な課題となっています。

 

 

■平岡部長(以下、敬称略)
自動機事業部では、自動包装機械をメーンに扱っています。もともと1956年(昭和31年)に、石鹸メーカーからの要望で石鹸用の自動小箱詰め機(カートナー)を開発したのが始まりでした。これが現在でも主力商品として続いており、食品や製薬業界で活躍しています。

■福嶋室長(以下、敬称略)
鉄道車輪整備にもオーエム製作所の機械が使われているとか。

■常石
ええ。鉄道車両は、どうしても車輪の踏面が磨り減り、勾配が少なくなり、振動や揺れの原因となることで、制動や乗り心地に悪影響を与えます。そこで車体から台車を外さないまま車輪を研磨し削正できる床上車輪旋盤機を製造しています。JR各社、多くの私鉄で採用いただいています。

■山村
ダイワボウ情報システム(D I S )からは、営業の最前線で活躍されるお二人に参加いただきました。

 

 

■松本本部長(以下、敬称略)
担当している首都圏営業本部には現在、20支店1課があります。売上規模は約1200億円。法人向けの40%以上を占めます。首都圏は、売上規模も多いのですが、競争も激しく、変化の激しい市場です。今後で言えば、クラウド化が進展することで、タブレットなど持ち運びができる端末が増え、従来の端末がまったく売れなくなる可能性があるなどです。そういった変化に対応することが非常に重要になってきました。

■山下部長(以下、敬称略)
中四国・九州営業本部内で、中四国9県を担当しています。売上規模は約200億円と首都圏に比べれば少ないですが、各県に支店を置き、地域密着で取り組んできました。とくに文教市場で成果が上がっています。顧客に対して、何ができるのかを常に考えて対応しています

 

 

■山村 繊維事業はいかがですか。

■岩城部長(以下、敬称略)
ダイワボウプログレスは、産業資材、カンバス、ゴム製品の3部門があり、わたしは産業資材を担当しています。売上規模としては40億円前後で、おもにカートリッジフィルターや濾過布、重布製品、土木資材など生産材が中心です。

■松田部長(以下、敬称略)
ダイワボウノイは、祖業である紡織事業を受け継いだ会社ですが、現在は製品事業が中心です。とくに機能製品部の売上の90%はノイ社のコアビジネスであるインナー製品が占めます。また、機能製品課ではかゆみ鎮静繊維「アレルキャッチャー」や機能性マスク等も扱います。インナー事業の特徴としては、中国とインドネシアに自家工場を持ち、同時に日本では販売会社と連動して、企画・生産から販売まで一貫で取り組んでいます。

 

 

■山村
ここで、会社としての起源を同じくする3社が再会し、しかも、これからの事業を担う皆さんが一堂に会したことで、新しいスタートをきるという実感が出てきましたね。ぜひ、今後の展望を聞かせてください。

■松本
D I S は商社ですから、PCやサーバーのシェア拡大は宿命です。現在、PC販売のシェアは13%ですが、これを20%に高めたい。販売台数でいえば、200万台から300万台です。また、事業規模拡大には何が必要か、いま全員で考えています。ひとつはアイテムを増やすことでしょうし、さらにグループ内でコラボレーションすることで新しい商品を作ることです。現在、サポート・保守に関してもグループ一丸となって取り組んでいます。

 

 

■常石
工作機械は、いかに勝ち組に残るかということが重要です。最近では大手工作機械メーカーも当社主力の立旋盤に参入してきました。そうなると、いかに顧客のニーズに合った機種を早く開発できるかにかかっています。また、部材調達の工夫や部品の共通化を行うことでコストを抑えた廉価版の機種も開発しました。これは特注機が使えなかった中小の事業場でも十分に導入できる価格帯です。これからは国内外の展示会やショールームに現物展示して、提案する予定です。

■松田
衣料製品の場合、市場の流通量の90%以上が海外製になっています。しかも2000年代に入ると、SPAの台頭で店頭価格も下落しました。しかし、これらの動きに対して安さだけに目を向けていると物事の本質を見誤ります。やはり、ビジネスモデルの転換を図り、真に顧客が求めているものを追求し、将来性のある商品を、また新たな顧客層を開拓していくことが必要です。さらに、海外で売るという方法もあります。思い切った舵取りが必要だと感じています。

■岩城
産業資材の場合、自家工場の生産品をいかに拡販するかがテーマです。ダイワボウポリテックやカンボウプラスなどグループ各社との連携も重要です。なかでもカートリッフィルターは国内外とも好調でして、とくにアジア市場で、さらなる販売拡大を狙っています。また、河川工事や法面補強材に使われる土木資材は、他社には少ない商品だと自負しています。重布・帆布もダイワボウにとって歴史のある事業ですし、北海道から九州まで代理店網を持ち、それこそD I S さんと同じように地域密着で取り組んでいます。

3事業連携のキーワードは “海外”

 

■福嶋

今後、3事業でどういった相乗効果が期待できるのでしょうか。

■平岡

自動包装機の場合、食品工場などで使われる機械なので、国内人口が減れば、市場も縮小します。ですから、従来のカートナー専業からの脱皮が必要です。その上で、新しい市場に出て行くこと。つまり今まで付き合いの薄かった電子機器メーカーや電機メーカーへの提案、さらには、海外市場の開拓です。しかし、自社だけでは経験が決定的に足りません。今回、ダイワボウホールディングスの一員となったことで、グループが持つ商流や海外でのノウハウが活用できるのではないかと期待しています。

■山下
現在の私たちの顧客も海外進出が加速しています。しかし、海外の調達には関与
できていないのが現状ですね。そうなると、D I S としても海外市場にどうやって対応する
か考える必要が出てきました。

 

 

■松本
商社はメーカーと組むことが絶対に必要です。その面でD I S も勉強不足ですから、メーカーであるグループ会社からいろいろ教えていただきたい。

■常石
営業担当者同士で、人脈をオープンにすることも大切ですね。そこから、いろいろと新しい発想や連携のきっかけが生まれるのではないでしょうか。

■山村
ひとつ“海外”というキーワードが出てきました。

■水口
実際に海外販売を担当する立場からすると、ダイワボウグループが中国、インドネシアやブラジルに拠点を持っていることへの期待が大きい。すでに具体的なアドバイスもいただいています。時間のロスやリスクの軽減につながっています。3事業が連携することで1+1+1が3以上になる可能性を秘めています。情報・ノウハウ・販売ルートや仕事を進める仕組みなどの面で、自社では当たり前のことでも、グループ他社から見ればうらやましい点という場合が多々あるはずです。定期的にプレゼンテーションをしあうなど情報交換を是非やりたいですね。

■松田
海外に拠点を置いてかなりの年数になりますが、最近は安くモノを作る国と
いう発想から、その国をマーケットとして捉え、日本の優秀な機能性商品を売る国にするよう認識を変えています。そうなると、モノ作り、販売ともに前提となるのは人材。ここでもグループ内の人材交流が必要だと思います。

■岩城
昨年、D I S さんの展示会「D I S わぁるど」に出展させてもらいました。そこでカートリッジフィルターを出品し、家電メーカーさんを紹介いただきました。新たな販売ルートを紹介していただける他にも、情報交換することで、D I S さんの販売現場から見た新しい商品が生まれる可能性もあります。

■山下
今年も10月27、28日に岡山で「D I Sわぁるど」を開催します。今回もダイワボウホールディングスのブースが設けられます。家電メーカーさんやD I S の取引先を紹介できるはずです。また、ブースに持ち込んでもらった商品を通じてD I S としても勉強したいと考えています。

■山村
情報の共有化が重要だという点がはっきりしました。あとは、それをどうやって実行していくか。日常的に話し合いできる場を作るのがホールディングスの役目になります。

■福嶋
これからは3事業の人たちが、同じ釜の飯を食べるわけですから、自然と連携や取り組みが生まれてくるのではないでしょうか。まずは人間同士のシナジーを発揮させることでしょう。

売上高1兆円といえる会社に

■山村
最後に、10年後のダイワボウは、こうありたいという皆さんの夢をお聞きします。

■水口
いまは重厚長大の製品だけと言っても過言ではありません。しかし、10年後には、今回のグループ再編の効果を反映した製品も出したい。企業規模も、株価も、いまとはけた違いになってほしいと思います。

■松本
わたしがD I S に入社したときの売上高が300億円でした。それが現在は3000億円。大きくなる過程で、苦労と同時にいろいろ楽しい経験をしました。いまから入社する人たちにも、そういうワクワク感を経験させたい。売上高が5000億円、7000億円と伸びる会社にしたい。そのための種まきをやります。ぜひ、グループ全体で売上高1兆円といえる会社になりましょう。

■松田
そのためのキーワードは、やはり海外。世界はグローバリゼーションを超えて、シンクロナイゼーションの段階に入っています。それこそアイフォーンが登場すれば、世界同時で普及し、ファッションの流行も、どの国でも同時に流行する時代です。そのなかで「世界のダイワボウ」にするための足がかりを作っていきたいですね。

■平岡
モノ作りの工程が川上から川下まである中で、いまは特定の工程に対しての機械販売しかできていません。これからは、もっと一気通貫で取り組む必要があります。実際に、欧州では企業のグループ化で全工程に対応する動きが強まっていますから、当社も、そういった工場システムとして売り込むなど、新たな役割に挑戦したいと思います。

■山下
D I S は販売会社ですから、人材がすべての会社です。今後は、そこにメーカー的視点も入ってくるでしょう。3事業が融合することで、新しい取り組みができればと思います。ひとつのキーワードは、やはり海外です。日本の元気を海外にアピールできる会社になりたい。そこでも、「地域密着」「顧客視点」という基本姿勢は間違いないと確信しています。

■岩城
ダイワボウが世界で戦う会社になることが夢ですね。実際にインドネシアで営業を回ると、グループがこれまで蓄積してきたノウハウやコネクションが生きています。このブランド力を、もっと活用すべきでしょう。

■常石
各社が別々に成長するだけでは、どうしても限界があります。まずは人の交流などから始めて、全く別の事業として、新しい会社を作って新しい発想で新しい事業に挑戦できれば、グループも一段と大きくすることができるはずです。

■山村
各事業間の各職階で、こういった交流の場を作っていくことが重要ですね。人材交流は、すでに管理部門からスタートしていますが、戦略事業推進室を中心に、各事業の連携のあり方も検討していきたいと思います。苦労を共にしながら、未来を確かなものにしたいですね。