ダイワボウホールディングスの2010年4~9月期連結決算は、売上高が2107億円と前年同期比7.3%の増収、経常利益も17億円と前年同期に比べ大幅に改善しました。通期では売上高4500億円、経常利益38億円の増収増益を目指しています。
新年にあたり、この目標をどう達成していくのか。阪口政明社長、野上義博取締役常務執行役員ITインフラ流通事業統括、安永達哉同ITインフラ流通事業副統括、柏田民夫同化合繊・産業資材事業統括、門前英樹同紡織テキスタイル・製品事業統括に、「どうなる2011年」をテーマに語っていただきました。

グローバルな成長戦略を

 

──まず阪口社長に、2010年を振り返っていただくと。

■阪口
政府の経済対策による個人消費の持ち直しや企業収益の改善による設備投資の下げ止まりなど、上期の景気は緩やかながらも回復に向かいました。その一方で、円高・ドル安による輸出競争力の低下、繊維で言えば中国における賃金高、原料高騰など、事業環境は激変しています。
グループとしての2010年4~9月期連結決算は、増収増益となりました。しかし、外部要因、内部要因が大きく変わってきましたので、これまでの延長線上での戦略ではいけない。従来の戦略を状況に応じて組み直す必要があるということです。環境変化を考えれば、一気に手法を変えていかないといけなくなるかもしれません。
グループ全体で力を入れているのは、海外進出のなかでの国内マーケットと海外マーケットとの同一化です。また、ITインフラ流通事業と他の事業とのコラボレーションによって全体最適をどのようにしていくかも課題です。

 

──内外のマーケットの同一化というと。

■阪口
国内と海外マーケットを分けて考える時代ではありません。新興国の経済の急速な進展が、商品やサービスのニーズを先進国と同質化させつつあります。グローバルな視点で戦略を打ち出さないといけない時代です。ですからグループとして各社がスクラムを組み、世界市場に挑む必要があります。それも、中国を中心とした戦略ではなく、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)など新興国をも視野に入れるべきです。そのためには、現地でのパートナー・拠点づくりも検討しなければならないでしょう。

 

──ITインフラ流通事業と他の事業との コラボはどのように進められますか。

■阪口
ダイワボウ情報システム(DIS)は、国内最大級の独立系ITディストリビューターとして、その販売力が認められています。
一方、繊維の各事業会社はメーカーとしてのDNAを有しています。現在、DISではカスタマイズなどメーカーや販売店様の機能の支援・補完事業にも携わっておりますが、今後はお互いの得意分野の違いを起点に、全く新しい事業を創出していきたいと思っています。

下期は変化が表面化も

 

──ITインフラ流通事業は、上期の収益に貢献しました。

■野上
上期は前年同期と比較していい数字を計上できました。しかし、前年はリーマン・ショックの影響がありましたので、急回復したといっても一概には喜べません。ただ、上期としては過去最高の業績でしたので、1年を通して大きな目標が見えてきたとの思いもあります。しかし、いろんなものが変わりつつある。この下期はその変化が表面化するかもしれません。一番大事な時期となるでしょう。
また、モバイルWiMAX、スマートフォンやiPadなどいろんなモノが出ています。ですから多様化・高度化する新たな商材への感度を高めていかなければいけませんし、日頃からお客様と地道なリレーションを大事にし、数字をきちっと積み重ねていく、その両方が大事ですね。

 

 

──上期はパソコン市場の11.7%のシェアを確保できたと聞いています。

■安永
実はサーバーについても13.5%の実績を上げることができました。リーマン・ショックで昨年投資を見合わせた部分のリバウンドが今上期売上の回復につながったかもしれません。
それだけに下期は実力で事業拡大をしていかなければなりません。
全国87の販売拠点、1万7,000社の販売パートナーとの連携で地域密着型営業を推進します。マルチベンダーとして850社から商品が集まり、14の物流拠点を使ってそれをエンドユーザーまで届けることができる。ITメーカー様にも、売上面さらにはコスト面でもメリットを感じていただけるものと認識しています。

 

──化合繊・機能資材分野も好調のようですが。

■柏田
全体的には上期はまずまずでした。個別には合繊わた・不織布は、インフルエンザ需要が減退したものの、コスメ用途などが好調で、まずまずの成績で終えることができました。環境にやさしいレーヨンやポリプロピレン使いの不織布は、今後も大いに期待できると思います。

 

 

 

──どういった形で推進されますか。

■柏田
レーヨン事業に限りませんが、攻めということでは、ユーザー各社が海外展開を推進しているなか、当社もアジアの成長を取り込んでいかないといけないと考えています。
ただ、日本の商品をそのまま持ち込むのではなく、その国の事情にあった製品とするべきです。でなければ、事業として継続できるものではありません。
また、ユーザーとともに付加価値品の開発を行える研究開発体制の更なる強化も重要です。自社生産原綿から不織布・加工までを含めた一貫開発体制により、差別化原綿や特徴のある不織布や加工技術を加味した製品開発を目指します。
お客様の要求やクレームは、我々にとって”神の声”です。ユーザー対応を図ることが、技術対応力の向上につながる。その意味でのユーザー対応強化を営業・生産・開発に求めていきたいと考えています。

 

──守りとしては。

■柏田
品質・コスト競争力の強化です。原価低減活動を積み重ね、輸入品にも十分対応できるよう改善を継続する。また、原価低減だけでなく、付加価値を高めていくつもりです。
とくに機能繊維を用いた不織布の営業展開に重点を移していきます。

 

──この分野でも製品化は重要ですね。

■阪口
スパンレース不織布は、接着剤を使わず水流のみで繊維を絡めているため、衛生的で、除菌やコスメ、メディカル分野での利用が多く、原料から製品までの一貫生産を強化します。合繊事業の製品比率はまだ10%程度ですが、早期に25%くらいまで高めたいですね。

製品化が7割超す

 

──紡織テキスタイル・製品事業の製品化率はかなり高まっていますね。

■門前
製品は前期売上高の66%占めていましたが、今期は目標だった70%を上
期で超えました。一昨年はインフルエンザ需要で多機能マスクが動きましたが、今期は対米向けアンダウェアと国内は機能性インナーが好調で、上期は計画以上の増収ができました。トータルでうまくいったのが、衣料製品インナー事業です。
ただ、綿花が年初の80セント強から昨年11月には160セント弱まで上昇しました。この原料高や中国の生産拠点の人件費上昇によるコストアップが相当利益を圧迫することになりました。低調な国内市場からは想像がつきにくいと思いますが、新興国の旺盛な需要増で、綿糸さえ不足気味です。もちろん原綿相場をうんぬんしていても仕方がないので、企業対応としては、人件費を抑制するための生産拠点の再構築も必要でしょう。
コストの見直しは永遠の作業です。今年の懸念材料はやはり原料の高騰と量的な不足ですね。業界的には今年は中国の労働力不足による製品の納期問題も心配されます。また付加価値を評価してもらう作業も併行して行わなければならないでしょう。他方、除菌関係やメディカル関連新商品ができましたので、今年から本格展開していきます。

 

──衣料品・生活資材事業の製品比率が7割を超えたわけですが、簡単ではなかったと思います。

■阪口
カジュアル衣料を展開しながら、インナー関係にも取り組んできました。そうした経験が生かされています。自らオペレーションしたので苦労はしましたが、それが顧客に認知されたと思います。

 

──差別化のうえでは、独自素材の重要性も増しています。

■阪口
その面ではグループとして綿、レーヨン、合繊を生産しています。これは強みです。同時にこれまで培ってきた紡績技術も活用していきます。中国内販といったことでも、衣料品・生活資材事業だけではありません。グループ全体で取り組むべき課題です。

 

顧客第一主義は変わらず

──お客様への新年のメッセージをお願いします。

■野上
当社はもともと顧客第一、地域密着が基本です。これからはお客様と一緒に何をやるかが大事です。右から左に商品を流すだけで済む時代ではありません。雑誌やwebを使ったプロモーション、フェアやセミナーの共催、個別案件の提案支援など新しいことだけではなく色んなことに、今まで以上に一緒になって取り組むという姿勢で臨みます。

■安永
これからのディストリビューターは従来の販売代理という立場に加え、市場ニーズメーカーへの情報提供、組み込み作業の提供、ユーザーの購買サポートなど、かゆい所に手が届くことが求められています。デジタルのようでいて、実はアナログ対応が重要なのです。機能を補完する仕組みを提供することによって、お客様に儲けてもらうこと、それが結果として当社の利益にもつながります。

■柏田
お客様に対する思いや基本姿勢は変わりません。その基本はお客様のご要望にお応えることです。この思いを今後も継続していきます。「ダイワボウと仕事をして良かった」と言われるのが一番うれしい。
「ダイワボウはそこまでやってくれるのか」と言われるようにしたい。

■門前
テキスタイルは、お客様の延長に開発があります。従来のお客様との共同作業による開発を優先し、既存の顧客のシェアを高めていきたい。それと、対米向けインナーの生産を拡大するためにインドネシアに新たな生産拠点を構築する予定です。コスト、品質、納期が評価された結果だと考えています。国内向けについては市場ニーズに合わせた開発が重要ですね。機能性インナーに特化し、売上増となっていますが、今後とも機能性インナーの開発を強化していきます。
カジュアル衣料は苦労していますが、今後はODMに注力するつもりです。お客様に向けて、我々が展示会を開く。そこに既存のお客様やリテーラーに来ていただいてODMによる素材、スタイル、色などダイワボウ商品の提案を行っていきます。

 

──最後に阪口社長からお願いします。

■阪口
菅野前社長からバトンタッチされて半年になります。
各事業会社の商材をどう結びつけていくか。B2B、B2Cへの展開。健康・安全・安心、環境配慮型の商品・サービスを提供する企業としてどう発展していくのか。様々な課題はありますが、それを乗り越えることで、よりよい収益、喜ばれる会社を目指します。
そして、お客様の喜びを自分のものとして、明日を築きたい。当社は本年4月をもって創立70周年を迎えます。これからも顧客との結びつきを深めながら、新たな歴史を刻んでまいります。