新時代が始まり、ビジネスを取り巻く環境の変化は一段と激しさを増しています。そこでダイワボウグループの主力3事業であるITインフラ流通、繊維、産業機械それぞれを統括する取締役に、これからの事業環境の予測とそれに 対応した新たな事業戦略について語っていただきました。

 

IoTやAIなど新たな技術潮流への対応は不可避

技術継承・人材育成に全力を挙げる

 

─ 2018年度の業績をどのように見ていますか。

 

非常に繁忙となった1年でした。売上高139億円、営業利益12億円と当初の業績予想を上回る数字となったことは、従業員の頑張りが結果となって表れ、評価しています。ただ、繁忙ゆえに生産現場に非常に負荷がかかってしまいました。大型工作機械の生産は労働集約的な面が大きいことから、生産効率が低下してしまったことが課題です。当社は従業員の若返りを進めてきましたが、一方で技術・技能の伝承が遅れている傾向もあります。このためスキルマップを作成し、計画的に人材教育を進めています。生産設備も導入後30年を経過した機械が多数あります。こうした設備の更新も計画的に実施しています。設備更新によって生産効率が向上すると同時に、従業員の士気も上がることを期待しています。


─ 米中貿易摩擦の影響や海外拠点での取り組みはいかがですか。

やはりボディーブローのようにジワジワと影響が出てきました。特に中国のユーザー企業が、中国経済への悪影響や世界的な景気後退の懸念から設備投資に対して慎重な姿勢を強めています。ただ、航空機エンジン関連は世界的に活況が続いています。
自動包装機はインバウンド関連の需要がありますが、今後は影響が出てくるかもしれません。当社は米国と中国に現地法人があり、生の声を聞くことができますから、営業部門が連携しながら情報収集に努めています。市場動向を把握しながら、過剰在庫を抱えるリスクを避けなければなりません。また、海外事業で課題となっているのがブランド力です。アフターサービスの充実などを通じて地道にブランド力を構築する必要があります。

 

─ 今後の市場環境の変化をどう見ますか。

 

工作機械は引き続き航空機関連の需要が継続するでしょう。民間ロケット開発も盛んになっていますので、航空宇宙分野は最も力を注いでいるところです。国内シェアをさらに強固にし、海外シェアも伸ばしていきたいと考えています。自動機械は国内での人手不足や“働き方改革”などの動きを背景に省人化設備の需要が一段と高まるでしょう。そして、やはりAIやIoTといった新しい技術潮流への対応は不可避です。

 

─ 環境の変化に対応するために目指すビジネスモデルはどのようなものでしょうか。

 

当社の製品は仕様の異なるものが多く、どうしても量産が難しい面があります。そこで部品や仕様の標準化・共通化を進め、生産効率の向上を図ることで、働き方改革に沿った労働環境の実現にもつなげていきます。また、若い従業員の構成割合が増えてきていますから、技術・技能の伝承や製品の品質向上のためにも人材教育が最重要です。具体的な教育プログラムを作り、習熟度別に教育を進めていくなどでスキルアップに全力を挙げて取り組みます。

 

─ 新たな体制作りや取り組みについては。

 

新しい技術への対応が不可欠ですから、開発担当の取締役がAI・IoT推進を担当するようにしました。長岡工場(新潟県長岡市)のスマート化が狙いです。小さなことからでも実行し、生産や業務の効率化につなげます。AIやIoTを活用した製品開発でもダイワボウ情報システム(DIS)グループとの協業や大学との連携を進め、AIを用いた切粉検知システムの開発を進めました。機械の状態が遠隔地でも分かる「遠隔監視」や、離れた場所から操作できる「遠隔制御」などを実現する機械稼働効率化支援システム「OTAM」の開発にも取り組んでいます。大きな夢から足元の課題まで検討していくことが今期の目標となります。