立旋盤をベースに幅広い領域へ

 

「オーエム製作所は立旋盤のメーカーですが、これをベースに事業領域を広げています。とくに勢いがあるのが航空機分野」――オーエム製作所でグループ開発部門を担当する中村多喜夫上席執行役員は指摘します。航空機需要は20年後には現在の2.5倍にまで拡大すると予想される成長分野だけに、部品製造で使用する立旋盤の市場として大きな可能性を秘めます。

航空機分野で立旋盤を使用するのは、部品の製造工程だけではありません。「航空機エンジンは定められた飛行時間を経過すると、メンテナンスが必要になりますが、そこでも立旋盤を使うことになります」と中村上席執行役員。部品製造に加え、エンジンなどのメンテナンスにも立旋盤が使用されることから、航空機分野との取り組みは安定した収益基盤となります。オーエム製作所では航空機製造の中心地である米国での販売拠点として2015年に米国子会社であるO-M(U.S.A.)と、現地ディーラーのジャパン・マシン・ツールズ、そして倉敷機械の米国法人であるクラキ・アメリカの3社合弁でジャパン・マシン・ツールズ・ミッドウエスト(JMT Midwest)をシカゴに設立し、航空機産業の中心地である米国北東部や中西部での営業活動を強化しています。

合弁パートナーである倉敷機械は、横中ぐり盤のメーカーですが、ユーザーの間ではオーエム製作所が販売する立旋盤とセットで使用するケースも多く、両者が販売活動で提携することは、相乗効果も期待できます。有力な外部パートナーとのアライアンスという戦略が実現しました。

同業他社との連携には様々なハードルがあります。「3社それぞれの意向がありますから、その調整には、それなりの苦労もありました」と打ち明けるのは経営企画室の山田栄作室長。倉敷機械の親会社であるクラボウ法務部門との折衝などで経営企画室もその役割を担いました。海外での会社設立には現地での法務業務なども欠かせません。ひとつひとつ問題を解決することで現地法人の立ち上げにこぎつけました。
 

 

JMT Midwest設立で航空機分野に積極提案

 

海外の展示会でも高い評価

しかしここへきて、JMT Midwestの設立によって成果も出はじめました。「大手航空機エンジンメーカーからの大口引き合いが出てきた」と中村上席執行役員。今年9月には現地の国際見本市にも出展を予定しており、米国での認知度のさらなる向上を目指しています。

航空機分野は革新的な材料・技術がいち早く導入される分野です。そのため技術開発にも一段と重点を置いています。例えば航空機用エンジン部品はチタン合金やニッケル基合金の一種である「インコネル」などが使用されていますが、いずれも旋盤などで削るのが非常に難しい材料です。旋盤による金属加工では通常、切削液を使用して工具と被削材を冷却し、加工精度・速度の低下を防ぎますが、難削材の場合、通常の高圧クーラントでは十分に切粉を除去できないケースがあります。そのため、さらに切削液の噴射圧力を高め、切削点に集中して噴射、切粉を分断することで切削効率を大幅に向上させる超高圧クーラントの研究開発も進めています。また、部品によっては材料が金属から炭素繊維複合材料(CFRP)に置き換わる動きも加速しました。「CFRPなど非金属材料の加工には、従来の切削とはまったく異なる方法が必要。こうした対応の研究も進めている」と中村上席執行役員は話します。

もう一つ注目しているのが「インダストリー4.0」に代表されるIoT。「ソフトウェア分野を強化するためにDISグループからシステム開発スタッフに出向してもらいソフト関連の開発を進めています」(中村上席執行役員)。すでに操作パネルのタッチパネル化や加工時の切粉の状態を監視するシステムなど開発成果も上がり始めました。グループ協業はシステム開発の現場でも着実に進んでおり「経営企画部門での情報交換やシステム分野での協力が進んでいます」と山田室長も話します。

「今後、立旋盤の要素技術を生かして事業領域を広げていきたい」と中村上席執行役員は強調します。例えば、産学連携による太陽光発電関連の技術開発を進めており、この開発にはダイワボウポリテックの不織布を活用する協業も行っています。また、山田室長は「自動機のオーエム機械もロボットなど新しい分野での開発が重要になり、鋳物のオーエム金属工業の技術も様々な分野に生かさなければ」と話します。次世代商品の開発にもグループ全体で取り組んでいます。