“日本品質”がアジアで高い評価

 

「中国や東南アジアで“日本製”や“日本品質”の紙おむつや紙ナプキンといったサニタリー製品の需要が高まっています」――ダイワボウポリテックの久保田泰昭常務取締役は指摘します。アジアで急速に需要が拡大しているサニタリー分野などに合繊綿や不織布、製品を供給しているのがダイワボウポリテック。ここ数年、各製品とも売上高が毎年2ケタ以上の伸びとなるなど、ダイワボウグループの繊維事業の収益をけん引しています。

アジアで日本製や日本品質のサニタリー商品が圧倒的な支持を得ている要因として、ローカル品と比べて格段に品質が高いことが挙げられます。また、アジア地域では経済成長にともない、国民の可処分所得が増加したことも需要拡大に拍車をかけました。一般的に1人当たりGDPが1000ドルを超えると紙ナプキンが、3000ドルを超えると新生児用紙おむつが、そして1万ドルを超えると大人用紙おむつが急速に普及すると言われます。現在のアジア地域は、まさにこの成長段階に突入しています。

ダイワボウポリテックは、国内のサニタリーメーカーへの原綿販売のほか、インドネシアの不織布製造子会社のダイワボウ・ノンウーヴン・インドネシア(DNI)が現地のサニタリーメーカーに対して不織布の供給を進めています。久保田常務は「国内と海外、両方のベストポジションで素材供給する体制が整いました。日本から輸出される製品に加え、日本のメーカーの現地生産体制にDNIからの素材供給で現地をサポートしています」と強調します。

世界的に紙おむつはスパンボンド不織布が主流ですが、日本のメーカーが採用するエアスルー不織布に対する評価が高まったことで、欧米メーカーもアジア市場向けにエアスルー不織布を使ったプレミアム商品をラインアップする動きが強まっています。

こうした状況のなか、DNIは現在、2系列の生産ラインがフル稼働となり、生産効率を高めると同時に更なる増産体制の構築を進めています。「現状の生産能力では不足ですから、インドネシアでの増産に加え、外部とのアライアンスの取り組みを進めています」と言うのは販売開発部の薄井義治部長。すでに原綿分野では海外の有力企業との取り組みが始まっています。

 

マーケティングと連動した開発が加速

 

生産ラインがフル稼働となったDNI

また、販売拡大が続いているのがフェイスマスクなどコスメ分野向けの不織布です。フェイスマスク用の不織布原反の販売だけでなく、OEMで最終製品を製造し、パッケージングまでして日本のコスメ関連の企業などに供給するケースも増えてきました。「衛生材分野で原綿、不織布、製品まで製造しているメーカーは世界で当社が唯一」(久保田常務)というように、最終製品市場と直結したビジネスモデルができあがっています。

「販売開発部に期待するのは二つのこと。一つは現行商品のさらなる発展です。顧客満足度をさらに高める開発です。もう一つは、保有技術を活用した新しい分野の開拓。いずれもマーケティング機能が欠かせません」と久保田常務。薄井部長も「基礎技術研究に加えて、販売につながる開発が大事。そのためにはシーズではなくニーズ志向で取り組まなければ」と話します。次の収益の柱となる製品の開発が産学共同研究で進められています。

また、グループ連携の重要性も高まっています。例えばフェイスマスク用不織布の原綿にダイワボウレーヨンの機能性レーヨンの活用や、播磨研究所ではダイワボウプログレス、カンボウプラスとの情報交換を実施しています。さらにDISやオーエム製作所との連携にも前向きです。「ITのノウハウの活用や自動包装機との共同提案の可能性を探りたい」と久保田常務。なによりDISの徹底したマーケットインの発想や、オーエム製作所が推進する得意分野でのグローバル戦略といった取り組みは、繊維事業にとっても大きな刺激を与えてくれました。 久保田常務は「今後の課題として国内のみならず海外の大手メーカーとも連携して、当社の製品を世界に向けて発信していく」取り組みを強める考えです。