ダイワボウホールディングスが新たにスタート

 

 

■未来を見据えてポートフォリオを充実

──7月1日付でダイワボウホールディングスに商号変更し、ITインフラ流通事業のDISと、繊維事業を統括する中間持株会社「大和紡績」を置く新体制となりました。両社の経営統合から今日までの経緯をあらためてお聞かせください。

繊維事業については、今後も改革は継続しますが、これまでの構造改革によって、ある程度の形ができつつあります。しかし、中長期ビジョンのなかで、今後の当社の持続的成長を支えるための事業ポートフォリオを慎重に再検討した結果、繊維だけでは線が細い。
異分野のDISと経営統合することで、さらに広い視点で両社が活躍できるのではないかと考えたわけです。
ただ、業容の拡大や多様化だけで、企業が成長したとは言えないと思っています。今回の統合の目指すところは、ダイワボウらしさを追求しながら、長期的な企業価値の向上に向け、どのような事業であっても、現状に甘んじることなく、常に自らのビジネスモデルを刷新できる企業風土を根付かせることです。

 

──統合により、様々なシナジーが期待されます。

現段階では体制づくりに着手したに過ぎません。これからどう取り組んでいくのかが重要です。まずコミュニケーションによる相互理解が優先します。
ダイワボウの人間から見たDISのイメージと、DISの人がダイワボウを見たそれは、双方ともに実像とは違うのではないでしょうか。私たちは、相互に他社に誇れる特徴や強みを有している一方、ウィークポイントもあるはずです。ですからシナジー以前に相互理解を深め、すべてを分かったうえで共同作業を行っていきたい。
このために、経営として様々な形のコミュニケーションサークルを支援しますが、事業化を推進する組織として「戦略事業推進会議」を発足させ、スピードアップを図ります。
また、執行役員で組織する「ブルー・オーシャン戦略会議」を実施します。今後の事業展開においては、既存の競争軸とは違う形での戦略を組むことを明らかにするために命名しました。
これまで、繊維事業においては、衣料製品や産業資材など、市場やターゲットを細かく再定義し、細かな成功を積み上げてきました。一方のDISは大手ITディストリビューターとして、業界での認知度も高く、全国展開・総合的な取り組みをしてきました。しかしながら、IT市場は、まだ技術革新により進化の余地が大きいものの、これまでのような爆発的拡大は見込みにくくなっています。
最近では、不必要な機能を削ぎ落としたミニノートパソコンなど、まだまだ規模は小さいが、インパクトのある商品が既存市場全体のバランスを崩しつつあります。
したがって、繊維事業のみならず、ITインフラ流通事業もこれからの商品開発や販売戦略策定にあたっては、新たなコンセプトで機能を見直すなど今までの常識を見直し、既存の競争軸とは違う新たな価値を顧客に提供していかなければなりません。

 

■繊維とITインフラ流通は車の両輪

──08年後半から経済情勢は一段と厳しさを増しています。

今回の不況は、過剰信用の破綻にともなう金融不安が原因です。そのため金融機能が打撃を受けたことで、全産業に悪影響が出ました。全体需要が落ち込むと、一部の商品がよくても、なかなか企業としても対応が取りづらい。当社も08年度上期までは好調だったのですが、下期に、繊維事業もDISもダメージを受けてしまいました。
確かに、政府の財政出動もあり、景気底入れ宣言がなされましたが、実感はありません。また、全産業が在庫の削減に取り組んだ反動で、短期的には需要は回復傾向ですが、根本は、米国の金融が回復しないと難しいのかもしれません。
当社は、繊維事業とITインフラ流通事業があるわけですが、この二つを“車の両輪”として運営していく考えです。
双方の事業に共通することですが、一番重要なのは、既存の業態での事業をさらに強化すること、また、周辺市場の深耕を図ることです。
繊維事業にあっては、素材からの開発力に基づき独自技術をさらに進化させ、独創的な事業モデルにより次の時代を切り開きたいと考えています。一方、ITインフラ流通事業では、独立系ならではの機動性や柔軟性を活かして、市場での存在感を確固たるものとしてまいります。

 

■全社員でダイワボウを売っていく

──最後に、新生ダイワボウグループの強みとは何かをお聞かせください。

人材です。
激しい環境変化のもとで、強みを実現し続けるためには、なによりも人材が重要です。
ダイワボウのDNAとして、両社の社員が“誠実さ”と“柔軟さ”を有していることに意を強くしています。
責任感・倫理観など顧客に信頼される基本である「誠実さ」は、当社の「顧客志向」を支えています。また、従来の方法や価値観に固執せず、進化の方向性に従って「柔軟」に行動できる人材が各所にいます。その意味で、グループ全社員がダイワボウという存在をアピールする、分かりやすくいえば、ダイワボウそのものを売り込んでいきたいと考えています。
今回のメーカーとディストリビューターの経営統合は、技術力と販売力の連携であり、互いに刺激し合える環境もできました。私たちは、この変化をチャンスと捉え、確実に活かすことによって、継続的に成長していきたいと考えています。
これからのダイワボウグループに、ご期待ください。