事業を貫くフィロソフィーを作る環境・社会への取組み - 国際市場で戦う生産・販売体制を構築 -

繊維事業は中期経営計画最終年度となる2021年3月期に連結売上高797億円、営業利益44億円を計画しています。合繊部門、レーヨン部門、産業資材部門、衣料製品部門ともに国内市場と海外市場を「国際市場」として一体的に捉え、生産・販売ともに国際市場に対応した体制構築に取組みます。また、繊維事業全体を貫くフィロソフィーとしてSDGs(持続的な成長のための目標)を掲げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みも重視します。

 

 

─ 前中期経営計画で成果と、明らかになった課題は何でしょうか。

繊維事業は増収増益基調が続く体質となるなど比較的健闘しているといえます。ただ、収益水準を見ると、まだまだ力強さに欠ける面も少なくありません。そうした中で繊維事業をリードしたのは合繊部門とレーヨン部門です。衛材用途を中心とした積極的な設備投資と販売拡大を進め、収益体制を築きました。やるべきことができたと言えるでしょう。

今後の課題はやはり海外での売上拡大です。少子高齢化が進むなかで国内市場での成長は期待できませんが、アジアを中心とした海外市場は急速に拡大していますので、市場の変化に対応するスピードが求められています。こうしたなかで国内市場と海外市場という区別は意味をなさず、「国際市場」ひとつだと捉え、世界同時に販売できるような商品の創出が必要です。


─ 新中期経営計画で繊維事業の重点施策は。

まずは合繊部門、レーヨン部門で国内の増産効果を発揮することとアジアでの不織布生産、販売強化を図りコスメ、紙おむつ向けの衛材分野を拡大することです。中国や東南アジアでは需要が高まっていますので、インドネシアの生産拠点と大和紡績香港有限公司の連携を強め事業領域の拡大を進めます。産業資材部門はフィルターや土木資材、建築資材や新商品の展開を進め、海外生産拠点を活用した“ 地産地消型”ビジネスも拡大させます。そして、2020年のオリンピック関連需要も期待できるでしょう。衣料製品部門は機能性素材の活用で新しい事業領域へ参入してまいります。さらに、独自の原料や加工を活用する“ ファイバー戦略”を軸に開発提案型の事業を強化します。

市場は「国際市場」一つだと言う考え方に立てば、生産戦略も世界同時進行が可能な体制を作ることが必要となります。そのためには海外を含めて人材育成にも取組まなければなりません。衣料製品部門では、既に中国とインドネシアで米国向け、日本向けの両方を生産していますが、生産にあたって第三者機関による監査を受け、国際標準の生産管理体制を構築してきました。こうした動きは衛材などの用途でも当たり前になってくるでしょう。

そして、繊維事業全体を貫くフィロソフィーを作ることも今中期経営計画における大きな課題となります。その一つの軸となるのがSDGs やESG、環境・社会・ガバナンスへの取組み強化です。これは世界の大きな潮流となっており、特にグローバルな事業展開では必要不可欠になっています。ESG を推進し、生分解素材の活用や染色加工などの安全性に関する国際認証を取得するなど、環境問題に対応する「エコテックス・スタンダード」を重要重点項目として掲げ、それぞれの繊維事業会社が持つ強みを生かしたグループ協業を推し進めていきます。

 

 

“ファイバー戦略”を軸に国際市場へ提案

 

─ 今後の期待の取組みや商材は何でしょうか。

合繊部門、レーヨン部門では中国や東南アジアで需要拡大が続いているコスメ、紙おむつ向け衛材用の原綿や不織布が主力商品となります。産業資材部門では膜材やシートなどの開発商材の拡販に加え、フィルター分野の市場開拓の加速とアセアン地区における地産地消ビジネスの拡大を進めてまいります。

また、産学協業による研究開発に取組み、レーヨンなどの改質技術も進めてまいります。大学との共同研究においても、化学の力を応用し、メカニズム、エビデンス、そしてパテントを重視した開発に取組みます。日本だけでなく世界の潮流を捉えた繊維事業を目指します。