グループ協業で“ブルーオーシャン”を拓く

 

─ 今期は3カ年中期経営計画「イノベーション21」の最終年度です。ここまでの成果をどのように分析されていますか。

繊維事業は主要6事業会社で構成されており、その生い立ちや事業内容も様々です。繊維事業として一体感を持った協業体制を作ることが今次中期経営計画の大きなテーマでした。そこで「3つのG」として「グロース」「グローバル」「グループ」をスローガンに掲げ、売上高700億円、営業利益30億円を目指しスタートしました。

計画の初年度の為替は1ドル=80円でした。一昨年からアベノミクスが始まり、大規模な金融緩和が行われたことで、事業の前提となる経済環境と競争条件が大きく変化し続けています。昨年12月にはついに1ドル=120円台になり、主要生産拠点であるアジア諸国での人件費の上昇が続いたことなどから、衣料品事業は苦戦を強いられました。

一方、合繊部門ではこの円安によって国際競争力が回復したことと、当社が原料を販売する紙おむつなどの衛材分野で需要の急拡大が続いています。とくに中国やアセアン諸国は経済成長によって中間層が拡大し、安全・安心の観点から“メードイン・ジャパン”の人気が非常に高まっています。こうした需要に対応するため、ダイワボウポリテック播磨工場の生産設備を増強し、生産能力を従来に比べ約25%高めました。昨年、本稼働したインドネシアの不織布製造会社、ダイワボウノンウーブンインドネシア(DNI)も順調な立ち上がりとなっています。

また、産業資材部門も震災復興需要や建材の需要拡大で計画以上の収益を上げています。海外事業会社のダイワボウシーテックインドネシア(DSI)、ダイワボウインダストリアルファブリックスインドネシア(DII)も好調です。

このように各事業で明暗が分かれたのが今次中期経営計画の特徴ですが、目指していたグループの連携は進みました。例えばポリプロピレンとレーヨンなどのセルロース系繊維との複合素材を衣料用途に活用する取り組みや、製紙用途が中心だったメッシュベルトを衛材関連分野に提案するといった事業会社間の販路を活用する動きも加速しています。各事業会社が得意とする素材や技術、研究開発などを共有し、販路の交流も進めるなど、分散していた経営資源を有機的に集中投入する体制ができつつあります。グループの一体感も強まりました。

そして、こうした連携の大きな拠点になっているのが大和紡績香港です。香港は国際的な貿易、金融、ビジネスの拠点であると同時に中国とアセアン諸国との結節点でもあります。アジア地域をソーシングの基地とした衣料品の欧米向けビジネスだけでなく、自動車関連や衛材、コスメなど様々な産業が集積しています。こうした市場でグループ協業によって新規事業を創出することが重要です。
 

 

 

事業会社間連携で
ポリプロピレンの用途開拓が進む

─ 次期中期経営計画の構想をお聞かせください。

引き続き合繊と産業資材が収益をけん引することになります。具体的施策としてDNIの第二ラインの増設や、DSIの増床など生産能力の増強を行い、アセアン地域の需要を取り込んでいきます。次期中期経営計画では成長戦略の推進ギアを上げ、発展段階のレベルを高度化することが大きなテーマとなります。

衣料品事業では、ポリプロピレンとセルロース系繊維の複合素材のさらなる展開と、紙糸やフタロシアニン加工など独自性のある素材を中心とした事業を継続的に展開します。また、信州大学に設置されている先端繊維研究を目的とするファイバーイノベーション・インキュベーター施設の最大活用などによる新たな産学共同研究も進んでいます。販売戦略面においても、大和紡績香港を通じた海外販売を拡大させ、ドル決済のビジネスを増やしていくことが重要です。

繊維事業の各事業会社は、いずれも他社にない優れた事業特性と経営資源を有しています。グループ協業のもと、各事業が有する強みや優位性を「組み合わせの妙」によって有機的に融合させ、繊維事業として“ブルーオーシャン”を拓くことで利益水準を高めてまいります。

最後に、ダイワボウグループの繊維事業は、これらの協業体制による新素材や新事業の絶え間ない創造によって、いつも顧客にサプライズを提供できるユニークで輝きのある企業集団を目指してまいります。