分社化とDIS統合

──まず菅野会長に、社長としての7年間を振り返っていただくと。

■菅野
あっという間の7年間でした。社長としていろいろな人と出会えましたし、決断したそれぞれの出来事も思い出されます。その間、心掛けたことは、決めたことは実行するということ。言うは易し、行うは難しですが、心掛けたのはそれだけです。その結果どうだったのかというと、神風のようなこともあって、結果よしとしてもいいかなと。

 

──09年3月にDISを完全子会社にし、同年4月に経営を統合しました。繊維事業とITインフラ流通事業の融合はどのような方向で進んでいますか。

■菅野
繊維事業は生産会社、DISは販売会社ですから、違いは当然ながらあります。そのことはむしろ、グループ個々人の能力を向上させるうえで、非常に好ましいことだと思っています。判断力を養うには、物事の一面だけを見ていてはいけません。表裏、縦横斜めから見ることが大切です。DISとの統合は、そのような訓練を行う最高の機会ともなっています。1年目に互いの事業を理解し合い、考え方の違いが分かりました。これからは、お互いの特性や長所を融合することで、今までになかった新しい発想を生み出し、既存領域の拡大や新規顧客の創出につなげていこうと考えています。

 

──菅野会長は社長就任当初から、グループ会社の総力を結集することの必要性を説いていました。

■菅野
グループ企業間のコミュニケーションはすごく良くなったと思います。これからの時代は、人間の能力をどう活用するかで企業価値が決まります。そのためには、情報発信力、受信力、簡単に言えばコミュニケーション能力を高めることが不可欠です。グループ内に対してだけでなく、お客様、発注先、金融機関、同業者の皆さんとのコミュニケーション能力を磨かないといけません。
世の中全体の中のダイワボウだということを忘れてはいけません。1人でできることと、取引先などを巻き込んでチームで取り組むのとでは結果も規模の点でも大きく違います。

 

──次期社長を、当時の阪口取締役に託すことを決めた理由は。

■菅野
衣料品の営業をしていれば、修羅場とまでいかなくても苦労の場は多かったはず。その経験からか、彼はバランス感覚が優れています。

■阪口
昨年12月27日に、新年を前に従業員向けに文書を考えていました。その時に会長に呼ばれ、(次期社長の)話をいただいた。晴天の霹靂でしたよ。

暖かく、かつ厳しく

──阪口社長への期待の言葉を。

■菅野
予想外の質問だね(笑)。明るく楽しく仕事ができるような体制にしてもらうのが一番です。仕事だから短期間つらいことがあるのは仕方がないけど、定年までずっと苦しかったというのはよくない。彼なら温かくかつ厳しく、多くの従業員やそれぞれの事業を育てて行ってくれるでしょう。

 

──阪口社長の営業の原点は?

■阪口
私は最初、子供服を担当し、繊維関連企業が軒を並べる大阪の船場を走り回りました。ところが最初は、船場特有の商売の仕方が飲み込めず、営業に行っても理解できないことだらけ。とにかく私の論理、原価計算が通用しない。なぜそんな価格になるのか理解に苦しみました。「船場学校」の考え方を叩き込んでいただいたのが、私の営業としての第一歩でした。

 

──菅野会長に学ぶところは。

■阪口
たくさんありますが、真似ることは難しい。菅野会長は一つの哲学をお持ちだ。会長の人間に対する造詣の深さ、そして忍耐力を習得しないといけないと思います。会長の洞察力は、人一倍鋭い所があります。

 

──新社長の抱負をお聞かせください。

■阪口
菅野会長が育ててきた経営資源を生かすことが基本です。これからは時間との勝負。迅速に数字として完結させることが最大のテーマですね。そして、従業員1人ひとりが、仕事に幸せや人生の意義を感じ、その結果がダイワボウグループに大きな収益をもたらし、社会に貢献できるという形が理想ですね。

 

──DISの統合効果を形にすることも大きな課題ですね。

■阪口
グループの繊維会社間では、特徴を生かした新商品がいくつか誕生しました。そこに新しい血、DISが入ることによって、グループの総力を結集しようという機運が一段と高まりました。DISのモットーである地域密着・顧客目線のビジネススタイルを、更なる改革を実行するためにも、グループ全体の人材育成に活かしたいと考えています。

 

──どんな人材を求めますか。

■阪口
会話できる、自分で決断できる、学べる、チームプレーできる。最後に、グローバルに考えられること。今や、どんな事業でも、競合先は国内企業とは限りません。国内と海外市場を分けるのではなく、グローバルな視点で戦略を打ち出していかねばなりません。さらに、どのような事業でも、単独企業の力だけでは優位性を維持することは困難です。当社グループ、さらには取引先との連携で成果を確かなものとすることができるはずです。

 

──当社は、来年4月に70周年を迎えます。

■阪口
伝統に甘えることなくチャレンジし続けたいと思います。そのためには、成長分野へのアプローチを図る一方、当社の価値の源泉・存在意義が何なのかを再確認し、成長戦略を再構築すること。バリューイノベーションがダイワボウグループのキーワードです。ダイワボウグループの更なる発展にご期待ください。