2022年4月に発足した経営戦略室の初代室長であり、経営戦略担当の取締役として経営戦略の立案・実行をリードしてきた猪狩 司氏。このたび、常務取締役から専務取締役となり、新たな気持ちでダイワボウグループにおける成長戦略の舵取りに臨みます。

 

ダイワボウホールディングス
専務取締役
猪狩 司

 

━ 現在実行中の中期経営計画の進捗について所感をお聞かせください。

 

『2030 VISION』を見据えた現中期経営計画(第2フェーズ)の初年度となった2025年3月期は、繊維事業の独立後初めての決算でしたが、売上は過去最高の1 兆1,368 億円、営業利益は過去2番目の348 億円と、繊維事業の売上減少を十分補える好調な業績でした。


約600 億円の売上があった繊維事業が抜けても、1兆円を超える売上を出すことができ、かつROE16.8%、ROIC14.3%と、ともに目標値をクリアしたことで、グループとしての底力がついたことを改めて実感しました。


この8月に、今期(2026年3月期)第1四半期の好業績を受けて通期業績予想の上方修正を行ったことは、社長からも報告がありました。

 

売上は当初予想の1 兆2,658 億円から1 兆2,800 億円へ、営業利益は当初予想の 385 億円から435 億円へ修正しましたが、これにより、真の 1 兆円企業への躍進だけでなく、2030年度(2031年3月期)の目標に掲げた「営業利益 500 億円」も確実に視野に入ってきました。

 

第1四半期の実績と業績予想の上方修正については、外部からも高評価で、「事業ポートフォリオ変革による躍進期」と方針づけた第2フェーズは順調に進捗しているとみています。私自身も目標達成に向けたチャレンジの道のりを、ワクワクする期待感を持ちながら進みたいと思っています。

 

 

━ 経営戦略室の組織再編を行いました。その目的と意図はどのようなものでしょうか。

 

今年7月に組織再編を実施し、経営戦略室配下だった経営企画グループとIR 推進グループを、「経営企画室」と「IR 広報室」に分離独立させました。

 

目的はそれぞれの部門の専門性を高めることです。経営企画室では、M&Aや資本提携を含めた経営戦略を策定・遂行します。一方、IR 広報室では、経営と一体となったIR 活動によって迅速かつ透明性の高い情報開示を行い、株主・投資家の皆様と建設的な対話を重ね、コーポレートブランディングの強化を通じた企業価値の向上に努めます。


もともと同じ部署内で連携を取りながら業務を行っていましたが、各グループを明確に分けてそれぞれの役割に特化させたほうが、お互いのパフォーマンスを向上できると考えました。両部署で人員の増強も図りました。


いずれも、グループにおける足元の実績などのデータ分析はもちろん、これからの事業戦略、外部への情報開示などをともに検討して連携を行い、企業価値の向上に貢献してくれる重要な部署となります。これまでの知見やリソースを生かした、より専門性の高いチームとなっており、大いに期待しています。

 

 

━ IR 活動と経営戦略で手腕を振るっておられます。そこに至るまでの経歴はどのようなものでしょうか。

 

IR 活動に関しては、2020 年に関わって以来、今でも四苦八苦しながら対応しています。私自身は1994 年にダイワボウ情報システム(DIS)へ入社し、東日本営業部で営業を、販売推進部で仕入れを経験、さらにマーケティング、企画部門にも従事し、DIS のグループ会社であるディーアイエスサービス&ソリューションでは物流も学び、様々な業務経験を積みました。


そして2020 年にダイワボウホールディングスへ移籍、以降はIR 活動と経営戦略に尽力することになります。当社に来るまで、IR は全く未知の分野でしたので、対応するため毎日必死にくらいついていきましたね。


上場企業として投資家の方々に事業内容や決算などを説明する必要があるので、より経営目線が必要になりました。経営指標やファイナンス、株についても勉強し、投資家や株主の方々との対話を通じてご意見、ご指摘を受け止めつつ、皆様が何を望まれているのか理解するよう努めました。厳しいご指摘をいただくことも多々ありますが、それは当社グループへの期待の裏返しだと考え、苦言も成長の糧としてきました。

 

こうした経験や学びが現在の私を形づくっているのだと思います。

 

 

━ 今年の統合報告書について、当社グループならではの見どころを教えてください。

 

9月22 日、第3 号となる『統合報告書2025』を公開しました。2023 年に制定したパーパス「バリューチェーンで人をつなぐ、社会をつなぐ、未来へつなぐ」を軸に、2030 年に目指す姿と、その実現に向けた価値創造プロセスを明確に描きました。

 

特に注目していただきたいポイントは、「パーパスがしっかりと浸透しつつあること」です。パーパスは、サステナビリティ経営を進めるための羅針盤であり、「なくてはならない企業グループ」を目指すための拠り所です。

 

統合報告書の冒頭で、役員や従業員が自身の働き方とパーパスを重ね合わせた「My パーパス」を掲載しているのですが、それらの表現にも「つなぐ」という意識が感じられてうれしく思います。徐々にパーパスが従業員一人ひとりに浸透していることがわかります。

 

人と社会とのつながりは、私たちの原動力です。常にそのつながりを感じられることが、私たちを動かし、組織全体のパフォーマンス向上につながると考えています。

 

私の役割は、事業の成長を見据え、いかに組織を機能させることができるかを常に考えること。謙虚に学び、サステナビリティ経営の基盤となる環境・社会・経済をつなぐ攻めの経営を推し進めることが大切だと思っています。これが私の「My パーパス」です。


この「攻めの経営」とは、企業価値創造の中核となる事業成長と社会課題解決を両立させる経営を意味します。当社グループは「事業を通じた社会価値創造の可視化」「サプライチェーンにおける責任」「人的資本とダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」の3つをサステナビリティ経営の課題として置いており、これらはいずれも「つなぐ」というキーワードを内包しています。

 

サステナビリティ経営は、もはや企業の社会的責任という枠を超え、企業価値創造の中核戦略となりました。全従業員とともに、この変革の時代を乗り越え、次世代により良い社会を引き継ぐことが私たちの使命です。