「人権DD」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。簡単に言うと、企業が事業活動を行う上で、人権侵害のリスクを特定し、防止・軽減するための取り組みのことです。近年、倫理観や法令遵守(コンプライアンス)、人権への意識が低い企業が、事業の存続に関わるほどの深刻な問題に直面するケースが増えています。人権問題への対応が遅れると、「法的リスク (訴訟や行政罰)」はもちろんのこと、「レピュテーション(評判)リスク」や「人材流出リスク」など、事業活動全体に大きな 影響を及ぼす可能性があります。

なぜ今、人権DD が重要なのでしょうか?
企業が信頼を得るためには、人権を尊重する姿勢が欠かせません。人権を大切にする企業は、お客様や投資家からの評価が高まり、長期的な成長につながります。反対に、人権侵害が明るみに出ると、企業の評判は大きく損なわれ、経営にも深刻な影響を及ぼしかねません。
また、従業員の「働きがい」にも直結します。人権が尊重される職場環境は、安心感と満足度を高め、生産性の向上をもたらします。従業員一人ひとりが安心して働けることこそ、企業の持続的な発展の基盤なのです。
さらに、人権DDを行うことで、潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。当社グループにおいても、法的・社会的・経済的なリスクを軽減し、持続可能な未来を築くために、一人ひとりが人権DDの重要性を理解し、日々の業務の中で実践していくことが不可欠です。
私たち一人ひとりの行動が、企業の未来を形作ります。共に、人権を尊重する企業文化を築いていきましょう。
人権 DDは義務化されているのでしょうか ?
企業の人権への取り組みは、社会から注目を集めており、欧州を中心に、企業における人権への取り組みの義務化が進んでいます。日本では 2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、将来、人権 DD 実施の法制化も進むことが予測されています。
人権に関する取り組みが事業活動に与える影響について
法務省の調査によると、企業の人権に関する取り組みの充実度は、事業活動に様々な影響を与えることが分かっています。
私たちのグループにおいても、人権への取り組みを強化することで、主に以下のような効果が期待できます。
新規顧客の開拓と既存顧客との関係強化(プラス効果)
お客様や企業の人権意識が高まる中、人権への取り組みは顧客の開拓や関係強化につながり、売上増加に貢献します。
取引停止のリスク回避(マイナス効果の防止)
人権への取り組みが不十分な場合、不祥事や調達基準の未達成による取引停止、競争入札への参加資格停止といった事態を招く可能性があります。
人材の確保と定着(プラス・マイナス両方の影響)
社会課題への関心が高い世代にとって、人権への取り組みは企業選びの重要な要素となっています。適切な取り組みは採用競争力と人材定着率の向上に繋がり、採用コストの削減にも貢献します。逆に、取り組みが不足していると、優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。
人権に関する取り組みの充実/不足が及ぼす主要な影響
正負の影響(下記の表にて正の影響を(+)、負の影響を(-)と表記)

法務省人権擁護局『今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応
「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書(詳細版)2024年3月』を参考に当社作成
私たちは何をすべきなのでしょうか ?
人権DDは、単に言葉を知っているだけでは意味がありません。日々の業務の中で、意図せずとも人権に関わるリスクを引き起こしてしまう可能性があるからです。私たち一人ひとりが、日々の業務の中で人権に配慮した行動をとることが大切です。では、具体的に何をすればよいのでしょうか?
人権に関する知識を深める
まずは「人権とは何か」「なぜ人権が大切なのか」を学びましょう。毎年実施されているコンプライアンス教育も、この一環です。積極的に参加し、理解を深めてください。

取引先との関係を見直す
取引先が人権を尊重しているか、サプライチェーンにおける人権リスクについて意識を向けましょう。

多様性を尊重する
社内には様々なバックグラウンドを持つ人々がいます。お互いを尊重し、多様な意見を受け入れることが、より良い職場環境を作る上で重要です。

リスクを発見したら声を上げる
もし、人権に関するリスクを発見したら、躊躇せずに上司や担当部署に相談しましょう。ヘルプラインの活用も有効です。

人権 DDは、決して難しいことではありません。私たち一人ひとりが日々の業務の中で意識して取り組むことで、大きな変化を生み出すことができます。人権 DDは、私たちがより良い会社、そしてより良い社会を作るための大切な一歩です。皆さんのご理解とご協力なしに、この取り組みを進めることはできません。
一緒に考え、一緒に行動し、より良い未来を築いていきましょう。