ダイワボウホールディングスは、今期(2025年3月期)から始動した中期経営計画の3ヵ年を「事業ポートフォリオ変革による躍進期」と位置づけ、新たな一歩を踏み出しています。計画初年度の手応えと、中長期ビジョン『2030 VISION』の実現に向けた取り組みについて西村幸浩社長が語りました。

 

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長

西村 幸浩

 

━ 今期の業績見通しをどのように捉えていますか。  

 

事業環境としては、円安や物価高の影響が続く中で、省人化や事業拡大に向けたIT投資のニーズが高まっています。特に今年10月に予定されるWindows 10のサポート終了を見据えて業界動向を注視していますが、計画策定時の想定よりも前倒しで導入が進んでいます。  

 

期末にかけても旺盛な需要が継続することから、受注残や進行中案件の増加などを見極め、四半期毎に業績見通しを精査し、売上高・利益ともに期初予想から大幅に上方修正しました。戦略的な在庫運用やパートナーとの協力体制強化に取り組み、機会を逸しないように需給の変動にスピーディに対応していきます。  

 

今期の連結売上高は 1 兆 1 千億円を超える見通しであり、これは 2021 年 3月期に達成した過去最高売上高である1 兆 435 億円を大きく上回る水準です。前期まで連結決算に含まれていた繊維事業の数字を差し引くと、初の 1 兆円突破ということになり、当社にとって非常に意義のある節目になります。各事業領域での競争力を保ち、ステークホルダーの皆様から信頼される企業グループであり続けるために、着実に業績を伸ばし、さらなる事業拡大を目指します。  

 

また1株あたり配当金を前期64円から90円へ増配し、あわせて100億円の自己株式を取得するなど、適切な株主還元策を計画的に実施できたことも、今期の成果です。株式時価総額は、客観的な企業価値や社会への影響力を表す指標の一つであり、売上高や利益と同じようにグループとしてこだわりたいと考えています。

 

 

━ 2024年10月に発行した統合報告書のポイントを教えてください。

 

2024年版の統合報告書では、パーパスを軸にしたグループ理念体系をはじめ、価値創造ストーリー、サステナビリティ戦略などの説明を充実させました。繊維事業の独立を機にグループの変革が期待される中で、ステークホルダーの皆様と進むべき方向性を正しく共有し、次なる成長戦略を推進していくために、統合報告書は重要な役割を果たします。  

 

また新たな企画として、経営層の「Myパーパス」の紹介や、グループ従業員との座談会を掲載するなど、多様な視点を盛り込みました。これは当社の最大の資産であり、価値創造の源泉である「人」にフォーカスし、エンゲージメントを高める取り組みの一環です。中期経営計画における人的資本戦略として掲げた「ウェルビーイング経営」も強く意識しています。  

 

今後も社内外の評価や意見を反映して統合報告書を積極的に改善・活用しながら、当社グループの取り組みと成果を丁寧に開示し、ステークホルダーの皆様との対話を大切にしていきます。

 

 

━ 「ウェルビーイング経営」について説明をお願いします。  

 

ウェルビーイングとは、身体的、心理的、社会的に満たされた状態を指し、単なる福利厚生の枠組みにはとどまりません。企業文化を変革することで、持続可能な成長を実現するための重要な施策です。当社グループで働く皆様が、ポジティブな感情を持って仕事に積極的に関わり、充実した人間関係を築き、自己実現を果たしながら達成感を得られる職場づくりを目指します。  

 

具体的には、賃金ベースアップ、研修機会の拡充、健康増進、休暇を取得しやすい環境整備などのさまざまな施策を通じて、「働きやすさ」と「働きがい」を追求することを重視しています。その積み重ねが、グループ従業員の意欲とエンゲージメントを高め、多様な個性と能力を持つ人材の活躍につながると信じています。  

 

またウェルビーイング経営の実践は、個人の幸福度を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上とイノベーション創出にも直結します。それぞれの従業員が、身近な職場環境や自分自身の状態に当てはめて、ウェルビーイングを意識する機会を増やしていくことで、一丸となって推進していきたいと思います。

 

 

━ 中長期ビジョン『2030 VISION』の実現に向けたメッセージをお願いします。

 

昨年公表した『2030 VISION』では、2030年に向けたエクイティストーリーと、連結営業利益500億円というチャレンジングな目標を掲げました。その実現のためには、新規領域を含めて各事業がどれだけの実績を目指すべきかを見定め、会社単位・部門単位で「あるべき姿」をデザインしながら、そこから逆算された事業戦略を推進していく必要があります。

 

またROEやROICなどの経営指標を念頭に、中期的な視点を持って資本効率を強く意識することが重要です。ホールディングスと事業会社の連携を強化し、相互に積極的な提案と議論をしていきたいと考えています。

 

そして、従来の考え方に縛られず変化するニーズに応えていくためには、現場の声を生かしたボトムアップによる組織活性化が欠かせません。2030年までには、数多くのブレークスルーが起こるでしょう。そのチャンスを逃さないためにも、新しい価値観やアイデアが次々に生まれる環境を目指し、グループ各社での従業員と経営層との対話を促します。

 

当社のパーパスである「バリューチェーンで人をつなぐ、社会をつなぐ、未来へつなぐ」が表すとおり、事業に関わるステークホルダーの皆様との“つながり”が、将来にわたって企業価値を高めていくために最も大切な要素です。

 

直接的に形や数字に表れない仕事を含めて、当社グループには多くの役割があり、そのすべてが企業価値向上につながります。従業員一人ひとりがパーパスを意識して、グループの未来を自ら築いていく風土を醸成しながら、『2030 VISION』の実現に向けた取り組みを推し進めていきます。