ESGとは、「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(ガバナンス)」の略称で、企業の経営や成長において、環境・社会・ガバナンスという3つの観点から配慮が必要であるという考え方のことです。あわせて、2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:2030年までに達成すべき17項目の持続可能な開発目標)も国際社会の重要なテーマとなっています。いずれも企業の事業継続と成長に欠かせない取り組みであり、ダイワボウホールディングスもグループ全体で推進体制を構築し、ESGやSDGsへの取り組みを進めています。ここではESGやSDGsとは何か、なぜ取り組む必要があるのか、ダイワボウグループが取り組むべきテーマとは何か、どのように取り組みを進めるのかについて解説します。

一人ひとりの仕事を社会貢献につなげて
全社で事業成長の手段を得る活動がESG

ダイワボウホールディングスではESGやSDGsをグループ全体の事業継続と成長に欠かせない重要課題と位置づけ、昨年4月よりESG推進委員会を設置し、グループを挙げてこれらの取り組みを強化しています。ダイワボウグループがESGやSDGsに取り組む理由と目的について、ESG推進委員会の事務局にインタビューしました。

ESGへの取り組みが求められる理由
事業の成長と継続を支えるため

これまでも企業には利潤追求とステークホルダーに対する責任の両立、すなわち「CSR」(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への取り組みが求められてきました。ダイワボウホールディングスもCSRへの考え方やグループでの取り組みを情報発信するなど、CSRを経営の重要なテーマとして推進してきました。ESGはこのCSRをより具体化させた取り組みであると言えます。

 

ダイワボウグループのESG推進委員会の事務局を務めるダイワボウホールディングス 経営企画室 南 和則室長は「ESGでは企業に求められる社会的な貢献と、企業が負う責任の範囲がより広くなっています。そのため特定の部門あるいは一部の社員だけでは目標の達成が難しく、全社的な取り組みが必要です」と指摘しています。なぜ全社員を挙げての取り組みが必要なほどESGが重視されるのでしょうか。その背景として近年の経済活動の急速な発展が挙げられます。今やインターネットを使えば世界中の顧客と容易にビジネスが行え、企業はより多くの製品やサービスを提供して利益を拡大できます。その結果、エネルギーの消費量や廃棄物が増加し、自然環境に与える悪影響が大きくなっています。またインターネットがビジネスや日常生活の利便性の向上に役立つ一方で、詐欺などの犯罪の温床となったり、デマの流布によって経済や社会が混乱したりするといった問題も生み出しています。こうしたリスクは企業のコンプライアンスにもおよびます。

 

南室長は「社会問題が深刻化すれば市場や顧客に悪影響がおよび、企業は成長を見込めないどころか事業継続すら危ぶまれます。ですから企業が持続的な成長を目指すには利益の追求とともに、あらゆるステークホルダーへの配慮の両立が欠かせません。それがESGの考え方であり、企業に取り組みが求められる理由です」と説明しています。さらに企業に対する投資判断にESGへの取り組みを重視するようになったことも影響しています。ダイワボウホールディングス 経営企画室 主任部員の菊澤克之氏は「国連が2006年に発表した「責任投資原則」の作成に世界中の機関投資家が関わっており、機関投資家が投資先を決定する際にESGへの取り組み内容を評価して中長期の成長が期待できるかを判断しています」といいます。

ESGはSDGsの目標達成に向けたプロセス
守りのESGと攻めのESGで達成を目指す

ESGではどのような取り組みが求められるのでしょうか。まずESGへの取り組みで目指す目標は「SDGs」で定義されている17のゴールと169のターゲットと重なります。SDGsで示されているのは国連や各国の政府、さらには企業や投資家、市民団体など、あらゆる組織と人が目指す目標です。そしてESGはSDGsの目標達成に向けた、企業や投資家の方策となります。南室長は「ESGはSDGsの目標を達成するための手段という位置づけです。SDGsのゴールやターゲットの達成を目指すにあたり、ダイワボウグループの事業活動において環境、社会、ガバナンスの三つの観点からどのような社会貢献につなげられるのか、それらを実施するにはどのような方法が効果的なのかをグループの事業会社3社を交えて議論し、具体的なテーマとそれぞれの目標を決めて取り組みを推進しています」と説明しています。

 

ダイワボウホールディングスではグループの事業会社がそれぞれの事業を通じた社会課題解決への貢献機会としてSDGsのゴールを示して、ESGへ取り組むテーマを表明しています。これはダイワボウホールディングスの「サステナビリティ」ページで具体的な取り組み事例とあわせて公開されています。

ダイワボウグループの3 つの事業を通じた社会課題解決への貢献機会
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ダイワボウグループの3 つの事業を通じた社会課題解決への貢献機会

さらにESGの取り組みには二つの側面があります。それは「守りのESG」と「攻めのESG」です。守りのESGでは事業リスクの低減が取り組みの目的となります。例えば事業活動におけるCO2排出量の削減、労働安全衛生や働きやすい職場環境の醸成、人材育成、安定調達の確保などが挙げられます。一方の攻めのESGでは事業機会の増大が目的となります。例えば社会解決型の商品やサービスの提供、環境に配慮した商品開発、事業を通じた地域社会への貢献などの取り組みが挙げられます。

ダイワボウグループのESGの考え方
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ダイワボウグループのESGの考え方

企業が成長するチャンスを得られる
事業としての社会貢献活動

守りと攻め、いずれのESGへの取り組みも、企業が成長するチャンスを得られる「事業としての社会貢献活動」です。ダイワボウグループのESGも「事業の成長と社会貢献の両立を図る」ことを前提としています。ESGで得られる経済的なメリットには「企業イメージの向上」「社会課題への対応」「持続的成長」「新たな事業機会の創出」の4つが挙げられます。ESGへの取り組みをアピールすることで、その企業への信頼や関心が高まり、顧客や人材の獲得につながります。またESG推進活動の成果によって社会課題を解決することで、地域社会の信頼を獲得すると同時に経営リスクを回避することができます。さらに今後はESGへの取り組みが取引や投資の条件となったり、ESGを通じて新たなパートナーと出会いビジネスに発展したりするなど、持続的な成長や事業機会の創出につながるなどのメリットも期待できます。

 

ダイワボウグループでは昨年の4月よりESG推進のグループ体制を明確にし、最初の1年が経過したところです。ダイワボウグループでは各事業会社の事業内容に応じたESGへの取り組みを推進しています。例えばITインフラ流通事業を営むダイワボウ情報システム(DIS)は主に人や輸送、事業機会創出に関わる取り組みを、繊維事業を営む大和紡績は環境に関わる取り組みを、そして産業機械事業を営むオーエム製作所はエネルギーやモノづくりに関する取り組みを主に推進しています。さらに労働環境の改善など3社で共通する部分も多くあります。

グループの全社員への浸透により
ダイワボウグループらしいESGを推進

そこで各社の取り組みについてグループで情報共有するとともに、ダイワボウグループとして目指すべき方向性を議論するなどグループが一丸となってESGを推進するために「ESG推進委員会」と「ESG推進会議」という体制を構築しています。それぞれの役割はESG推進委員会がダイワボウグループのESG活動状況や有効性のモニタリング、ESG推進会議からの上程事項の審議など、ESG推進会議がダイワボウグループのESGに関する施策の策定、ESG推進委員会への上程事項に関する協議、ESG活動の推進などで、重点テーマを定めて適宜開催されます。現状の成果について菊澤氏は「1年目はESG推進委員会やESG推進会議の構築、ポータルサイトの作成など、グループの情報共有基盤を整備しました。さらに効果的な取り組みを見出すために、テーマを絞って議論したことで課題も把握できました」と説明します。そして南室長は「ESGを推進するにはグループの全社員が自身の仕事とESGがどのようにつながっているのかを意識しながら日々の仕事をする必要があります。それにはESGへの取り組みをESG推進委員を通じて各事業会社の社員一人ひとりに浸透させなければなりません。こうしてESGを推進する土台を築き、ダイワボウグループにとって大切なESGのテーマを見極め、具体的な目標を決めて進めていきます」と強調しています。

 

この特集で報告するESG推進会議では2020年度のESG活動の進捗と課題を共有し、そこからダイワボウグループが取り組むべきテーマを議論することが目的です。南室長は「多くの企業が取り組む一般的なテーマだけではなく、独自のテーマも加えてダイワボウグループらしいESGへの取り組みを推進したいと考えています」と意気込みを語りました。

初年度の取り組みの成果に手ごたえ
社内基盤の強じん化と事業の成長を目指す

「ESG推進会議」リポート

ダイワボウホールディングスではグループ全体でESG推進委員会およびESG推進会議の体制を構築してESGへの取り組みを進めています。その初年度を締めくくるESG推進会議が3月2日にダイワボウホールディングス本社にて開催されました。今回のESG推進会議にはグループ各社の担当者が出席し、初年度の取り組みを総括するとともに、次年度のテーマや今後の目標などについて議論しました。

Daiwabo Sustainable Action 2020
各事業会社が成果を報告

ダイワボウグループでは環境、社会、ガバナンスのそれぞれの各領域において、対象とする社会課題と18個の具体的なテーマを設定した「Daiwabo Sustainable Action 2020」を推進しています。今回はダイワボウグループのESGへの取り組みの初年度を締めくくる会議として、まずはグループ各社の担当者から取り組みの成果が発表されました。

 

まずダイワボウ情報システム(DIS)の人事総務部兼法務・CSR室の横山和正部長が成果を発表しました。環境および社会への取り組みにおいては、商品の輸配送の効率化やオペレーションの改善などによりCO2排出量を削減したほか、業務のデジタル化推進によって紙の使用量の削減等、業務効率化により働きやすい環境を整備しました。また、政府がGIGAスクール構想により推進する学校教育の情報化整備に注力しました。さらにソフトウェアの販売・提供を「iKAZUCHI(雷)」を利用したインターネット経由とすることで、クラウドやサブスクリプション等の新たなビジネスの共創につなげています。ガバナンスへの取り組みにおいては情報セキュリティマニュアルの内容を見直し、テレワークでの業務の安全性確保に取り組みました。

 

大和紡績の取り組みについて同社 経営企画室の加古治久氏が発表しました。環境においては、事業活動におけるCO2排出量/原単位の削減、産業廃棄物の排出量削減の設定目標に対して、冬場は暖房需要も含め、燃料エネルギーの使用量の微増はありましたが、各工場での3R活動・品質活動による歩留まり率向上(切り替えロス・糸切れの減少等)、原料ロス削減や省エネ活動などの地道な成果が表れ、いずれも目標値をクリアしました。また環境に配慮した商品開発においては、回収ペットボトルを利用した再生ポリエステル原料(リサイクル)、バイオマス(植物由来)原料、土中・海中での生分解性樹脂等を利用した不織布の開発に取り組みました。食品包装材料、高級フェイスマスク等への市場展開を目指しています。

投資家はESGに高い関心
情報発信が重要になる

オーエム製作所の取り組みについて同社 業務監査室の豊田正浩室長が発表しました。環境については工場が日本海側に位置しており、今年度は降雪が多かった影響を受けて空調の需要が増加しがちであったにもかかわらず、エネルギー使用の工夫や省エネ設備の導入などによってエネルギー使用は前年度並みで推移しています。さらに環境に配慮した商品開発においては油圧レス立旋盤「RT-915」や、自動工具交換装置「CAPTO-ATC」を開発、これらの小型化、省エネ、油圧レスという特長によってエネルギー消費や環境への影響の削減に貢献しています。なおCAPTO-ATCは二段重ねで設置できることでさらなる省スペース化を実現しており、この仕組みは特許申請中です。

 

ダイワボウホールディングスの単体での取り組みについて、各テーマの担当者が発表しました。まずESG事務局を担当する経営企画室 菊澤克之主任部員がRPAやメールの誤送信対策ソリューションの導入などを報告しました。また人事総務室の松尾洋課長は働きやすい労働環境に向けた取り組みについて、法務コンプライアンス室の但馬健一主任部員がグループガバナンスの推進とリスクマネジメントについて報告しました。IR・広報室の猪狩 司室長は機関投資家との面談や決算説明会の開催方法についてWeb会議やビデオ配信などのオンラインでの情報発信が今後は増えると指摘しました。さらに猪狩室長は「機関投資家は投資先の持続性、収益性の判断材料としてESGに高い関心を持っており、財務情報や市場動向に加えてESGへの取り組みも情報発信することが重要になっている」と強調しました。

ダイワボウグループのESGは
持続的な成長に向けての手段

ESG推進会議の議長を務めたダイワボウホールディングス経営企画室の南 和則室長は今後のESGの推進活動について議題を提示しました。まず2期目となる2021年度の取り組みのテーマについて意見が交わされ、ダイワボウホールディングス情報統括室の東上床洋二副室長や監査室の小澤直樹課長など出席者全員が、初年度の経験を踏まえてテーマを再検討する必要があると認識が一致しました。来期に向けたテーマを設定するにあたり、今後は新型コロナウイルスの影響などの社会課題をリスクとして捉えるだけでなく新たな機会創出と捉えて、事業として利益を上げながら社内風土を醸成し続けることが当社グループが取り組むべき課題です。

 

ESGは事業成長の手段であり、働きやすい職場環境の醸成や人材育成などの社内基盤の強じん化により将来にわたって企業価値向上につながる取り組みです。経営層から新入社員までの全員が日々の業務活動にESGを意識して取り入れて、社員一人ひとりが社会の役に立っていると実感が持てる、達成感を感じることができる、そんな会社づくりをESGの取り組みから目指していくという考え方を共有しました。

グループESG年間スケジュール(2021年度)
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グループESG年間スケジュール(2021年度)
2021年度以降の活動プロセス
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2021年度以降の活動プロセス