2020年度(21年3月期)も残すところあとわずかとなり、ダイワボウホールディングスが掲げる中期経営計画「イノベーション21」第三次計画はクライマックスを迎えています。西村幸浩社長に、これまでの業績や取り組みの振り返り、そして次期中期経営計画の考え方について語ってもらいました。

 

─ 昨年4月の社長就任から間もなく1年となりますが、振り返りをお願いします。

 

新たなグループ経営体制に舵を切った節目の年度となりましたが、新型コロナウイルス感染拡大により事業環境が激変したことで、先行きを見通すのが難しい状況での船出となってしまいました。一方、リモートやオンラインを活用したニューノーマルな働き方の普及が加速する中で、当社グループとしても各事業会社における感染予防策の徹底や計画的な在宅勤務の実施などにより、コロナ禍での事業継続のための対応が取れています。特にITインフラ流通事業においては、全国各地の企業に対してテレワークを推進する役割を担っているため、これまで積み重ねてきたIT活用のノウハウや情報収集力を生かして、より効果的な提案に注力しています。

 

そうした中、昨年9月に、繊維事業において不適切な取引が行われていたことが発覚しました。特別調査委員会を設置し、早期解明および再発防止策の策定に努めましたが、結果的に決算発表を延期する事態になったことも含め、ステークホルダーの皆様にご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。不正の発覚が遅れた事実から組織体制や風土に問題があったことは真摯に受け止めており、すみやかに再発防止策を実行し、グループを挙げて信頼の回復に努めてまいります。

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長
西村 幸浩

─ 今期が3カ年の最終年度となる中期経営計画の達成状況はいかがでしょうか。

 

当社グループの今期業績については、各事業でコロナ禍によるマイナスの影響を受けながらも、ITインフラ流通事業が力強くけん引し、順調に推移しています。前期までの段階では、昨年1月のWindows7サポート終了に伴ってPCの更新需要がピークを迎えたことで、今期はその反動が顕著になると予測していました。しかしながら、テレワーク普及によるPC・周辺機器およびクラウドサービスの需要の高まりや、教育分野でのICT環境整備が全国的に加速する中で、その変化に的確かつスピーディに対応できたことで、前期実績をさらに上回り過去最高の連結売上高となる見通しです。

 

現行の中期経営計画「イノベーション21」第三次計画(2018-2020年度)を振り返ると、今期に成長が加速しているクラウドサービス等のサブスクリプションビジネスの推進や文教市場の深耕については、2018年の計画策定時点で重点戦略として掲げており、国内マーケットの動きを早い段階から想定し準備を整えていたことが大きいと捉えています。売上高・営業利益の数値目標については、すべての事業年度で当初計画を大幅に達成する見込みです。2009年のダイワボウホールディングス発足からの歴史の中でも高い成長率で、大きく躍進した3年間となりました。

 

─ 次期中期経営計画についての考え方やポイントを教えてください。

 

次期中期経営計画(2021-2023年度)については、今年5 月に詳細を発表する予定ですが、新たな時代に向けた成長戦略と事業を通じた社会貢献の実践による「企業価値向上」を追求したいと考えています。いずれの事業においても、5年、10年という中長期の視点で捉えると従来の延長線上にあるビジネスのみでは持続的な成長は望めません。例えばIT インフラ流通事業の市場環境としては、今年9月予定のデジタル庁創設に代表される行政および民間企業におけるDX 推進や、教育ICT における「導入」から「活用」への進展などが期待される一方で、これまでの主力商材であるPC においては需要反動減への対策が不可欠です。そういう意味で、次の3年間は当社グループが将来にわたって発展を遂げるための転換期になるでしょう。既存事業の維持・拡大にとどまらず、資本効率を重視したコーポレート戦略を立案することで、大胆な変革にチャレンジしていきます。

 

またウィズコロナ/アフターコロナを見据えて価値観が多様化していく中で、各事業会社に求められる社会的責任は、より具体的で複雑になってきました。特にESG(環境・社会・ガバナンス)に対する意識を高めていくことが大切であり、それぞれの事業で培った発想力や技術力、ネットワーク力を駆使して、社会課題解決に向けて幅広く貢献していく必要があります。

 

そして、グループガバナンス体制の強化も非常に重要な課題です。上場企業には実効性のあるコーポレートガバナンスの策定・遵守がより強く求められるようになり、グループの監督機能を担うダイワボウホールディングスが果たすべき役割・責任も今後さらに大きくなるでしょう。まずは原点に立ち返り、グループ一体となってコンプライアンス意識の醸成を徹底します。また人材の適性配置や社内システムの統合・改良など、グループ経営資源を全体で有効活用することにより、各部門における機能の脆弱性をなくし、公正な事業運営ができる組織体制を構築することが重要です。

 

当社グループが企業価値を高め続けることで持続可能な社会の発展に貢献できるよう、各事業会社との機動的な連携と迅速な意思決定を実践し、あらゆるステークホルダーの期待に応えられる企業グループを目指してまいります。