ダイワボウホールディングスは、2024年5月発表予定の次期中期経営計画の策定に先立ち、重点検討事項と検討体制について開示し、中長期的な方針についての議論を深めています。現中期経営計画の見通しと、次期中期経営計画の考え方について、西村幸浩社長が語りました。

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長
西村 幸浩

ー今期(2024 年3月期)が最終年度となる現中期経営計画の進捗はいかがでしょうか。

 

現中期経営計画を発表した2021 年5月を振り返ると、GIGAスクール構想やテレワーク普及などの大幅な需要増に対応できたことで、初めて連結売上高が1 兆円を突破した直後だったため、需要反動減が避けられない中、3カ年でどのように成長を遂げるかが大きな課題となっていました。さらに、当時は新型コロナウイルスの感染拡大が長引き、サプライチェーンの混乱や供給不足などの影響があらゆる産業に波及したことで、当社グループを取り巻く事業環境も不透明な状況が続いており、中期的な予測が非常に困難でした。

 

2 年目(2023 年3月期)までの実績としては、利益面では為替変動や原燃料価格高騰の影響もあり、グループ全体としての目標水準には達していませんが、経済活動の正常化が段階的に進み、売上高は当初計画を上回り安定的に成長しています。

 

今期は第1 四半期までの状況として、ITインフラ流通事業で全国的に需要を獲得できていることで順調に推移しており、グループ経営指標として掲げ「ROE(自己資本利益率)14%以上、ROIC(投下資本利益率)11 ~12% 水準維持」の達成を目指し、全社を挙げてラストスパートをかけていきます。


ー次期中期経営計画の策定に向けてどのような取り組みが進められていますか。

 

詳細は5月に開示していますが、「全社パーパスの確立と成長戦略の策定」「グループ全体での価値最大化に向けた最適な事業ポートフォリオの確立」「成長投資と株主還元の最適化の実現」の3つのテーマを重点検討事項としています。

 

当社グループのパーパスについては、新たに発行する統合報告書にて広く発信する予定です。パーパスを起点として、より多くのステークホルダーから持続的成長に対する期待感を得られると同時に、事業環境の変化への対応力を兼ね備えたエクイティストーリーの策定に取り組んでいます。

 

また、事業ポートフォリオマネジメントについては、上場持株会社の責務として慎重に検証を進めています。企業価値を向上するためには、将来的に成長が見込める事業に投資することで、資本コストを上回るリターンを持続していくことが何より重要です。ホールディングスとしては、既存事業における市場環境と事業運営について、複合的な視点で将来性を評価しながら、企業価値向上の実現につながる取り組みをこれまで以上に加速していきます。

 

そして、各事業により生み出された収益について、それぞれの事業に対する成長投資のみを優先するのではなく、M&Aや株主還元も含めたグループ全体としての価値最大化を目指すための配分方針を議論しています。

 

次期中期経営計画の発表は2024 年5月を予定していますが、その1 年前に検討事項についての情報開示に踏み切りました。当社グループは大きな転換点を迎えており、株主・投資家、取引先、従業員などの幅広いステークホルダーに対して、当社の課題や検討体制を正しく共有し、中期的な方向性についての理解を深めていただくことが重要と考えています。

 

 

ー発行予定の統合報告書について特に重要なポイントを教えてください。


統合報告書については、2022 年10月から正式にプロジェクトを始動しており、ホールディングスの全部門と事業会社の担当セクションが参画して、長期にわたりミーティングを重ねてきました。その中でも、最も時間をかけたのが、マテリアリティ(重要課題)の議論です。社会全体と当社グループのそれぞれの持続可能性を追求して同期化していくために、解決すべき社会課題とグループとしての中長期的な発展の両面から事業機会とリスクを整理した上で、2030 年を見据えた10 項目のマテリアリティを設定しました。

 

そして、マテリアリティを包括したメッセージとして新たに制定したものがパーパスであり、それを主軸に据えて、経営資源や事業の強みを活かしながら社会貢献と経済的発展を実現していく「価値創造プロセス」を整理しました。当社グループの存在意義と提供価値をあらためて定義し、それを社内外に浸透させていくことで、ステークホルダーの共感を得ながら、一貫性のある事業運営を力強く推進していきます。

 

現中期経営計画を策定した際に、今期までの転換期を経て、次の3カ年で「新たな飛躍」、さらに次の3カ年で「持続的成長」につなげるというイメージを示しました。次期中期経営計画の策定に向けた抜本的な検討や、統合報告書の制作を通じた自社の再定義は、新たな飛躍に欠かせないステップです。これまでにないダイナミックな変革を着実に推進していくために、社内外との丁寧なコミュニケーションを継続しながら、将来を見据えたグループ経営を目指していきます。