~当社グループが培ってきたノウハウが「TCFD」対応の駆動力に~

 

企業が持続的に成長していくためには、環境や社会との共生が重要となります。当社グループは今年6月にサステナビリティサイトにてTCFD提言に基づく情報開示を行いました。その趣旨と今後の展望について説明します。

 

プライム市場上場会社に求められる TCFD提言に基づく情報開示

TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されます。簡単に説明すると「気候変動問題に対して企業がどう取り組むのか」という情報開示を促すための世界的な仕組みです。G20からの要請を受け、FSB(金融安定理事会)により2015年に設立され、2017年に最終報告書(TCFD提言)が公表されました。


コーポレートガバナンス・コードが2021年6月に改訂され、プライム市場上場会社はTCFD提言に基づく情報開示が求められるようになりました。当社のサステナビリティサイトでは環境経営を掲げていますが、当社グループは、環境活動が最終的に事業の強化につながるとの考えに基づき、従来から温室効果ガス排出量の削減や資源の有効活用、環境配慮商品の開発など環境負荷低減に取り組んできました。


今後はよりいっそう活動をステークホルダーに示していく必要があります。そのため今年1月にCO2排出量削減目標を公表、4月にはTCFD提言への賛同表明およびTCFDコンソーシアムへの加盟、6月にTCFD提言に基づく情報を開示しました。また来年度には財務的影響等の情報開示の拡充を予定しています。

気候変動に関する情報開示は 投資家や取引先からの評価指標となる

TCFDは気候変動がもたらす「リスク」および「機会」を特定した上で財務的影響を把握し、開示することを求めています。


気候変動に関してどのように対応しているかという情報は、投資家のみならず取引先からも企業を判断するための重要な指標の一つとなっています。言い換えれば気候変動に関する情報開示に積極的でないと見なされた企業は、投資家からも取引先からも見捨てられる時代が到来しているといっても過言ではありません。


開示項目としては、企業の経営・運営における中核的要素として「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目の開示が推奨されています。また気候変動関連のリスクや機会は中長期的に現れるため、2℃又は1.5℃シナリオ、4℃シナリオなどの複数の条件で「戦略」を分析する「シナリオ分析」を取り入れる必要があります。戦略立案時に「シナリオ分析」をしておくことにより、さまざまな対応策を事前に検討し適切な準備をしておくことが重要となります。


TCFD提言のベースになっているのは、気候変動が進んだ未来予測です。例えば近い将来、炭素価格など規制対応コストが増加する可能性があります。日本は2050年までに「カーボンニュートラル」を達成するという目標を掲げています。「カーボンニュートラル」とはCO2を含む温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることです。想定される将来のシナリオにどのような対策が必要か、いつまでにどのような手段で実行するのかというロードマップを作る必要があります。


またCO2を含む温室効果ガス排出量の上限が決められると、エネルギーを使用する工場なども操業が難しくなることが予想されます。事業を継続させるために代替エネルギーの確保や省エネルギー設備の導入といった対策を考えるなど、未来を想定して影響と対策を検討し開示していくことが、シナリオに基づくTCFD提言の枠組みとなります。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みを 統合報告書を通じて社内外にアピール

今後はグループ会社と連携し、ESG推進体制を通じて気候変動に伴うリスクと機会を当社グループのマテリアリティ(重要課題)にまで落とし込みができるよう推進していきます。また、温室効果ガスのスコープ3や財務的影響等の情報開示の拡充につなげるとともに、今後発行を予定している統合報告書にもその活動内容を盛り込み、脱炭素社会の実現に積極的に取り組む企業体であることを社内外に浸透させていきたいと考えています。


TCFDの登場によって、これまでの常識や、あるいは前提条件とされていた発想や価値観を大幅に変えることが企業に求められています。そのためには「助け合う」「新しいことにチャレンジする」といった連携がしやすい社内風土の醸成もTCFD対応を前進させる駆動力になります。


気候変動に関する取り組みは、未来の当社グループを築くためのチャレンジです。社員のみなさまには、ぜひ各セクションで取り組みを推進していただき、勉強会や意見交換会などの要望がありましたらESG推進室までご連絡ください。