2021年4月から始動したダイワボウホールディングスの中期経営計画では、3ヵ年を「将来にわたる発展を見据えた転換期」と位置づけ、ビジネスモデル変革を重要なテーマとしています。計画初年度の手応えと、次年度以降の取り組みについて西村幸浩社長が語りました。

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長
西村 幸浩

―今期(22年3月期)について第3四半期までの振り返りをお願いします。


新型コロナウイルスの蔓延から2年がたち、日々の暮らしやビジネスの様式が大きく変わりましたが、今期は感染症の直接的な影響だけではなく、サプライチェーンの世界的な混乱による半導体不足や原燃料価格の高騰など、深刻な市況の変化に直面した事業年度となりました。当社グループにおいても、過去最高業績となった前期(21年3月期)と比べると、GIGAスクール構想やテレワーク普及に伴う需要の反動減が顕著に表れる中で、供給面の不安定さは過去に例を見ないものであり、慎重な対応を迫られています。第3四半期までの連結業績としては、計画に対して厳しい進捗状況ではありますが、期の後半にかけて特需要因を除いたベース部分の需要が回復基調になりつつあり、デジタル化の加速やSDGsへの関心の高まりなど中長期的な成長機会につなげられる要素も少しずつ鮮明になってきました。

 

―中期経営計画における事業戦略の取り組み状況をどのように捉えていますか。

 

今期からスタートした中期経営計画では、グループ基本方針に則って各セグメントで事業戦略に取り組み、それを経営指標に基づきモニタリングする体制を重視しています。初年度は、ビジネスの環境としては難しい局面を迎えていますが、将来に向けた組織改革については、各事業とも計画的に取り組んでいます。

 

ITインフラ流通事業では、多様化するニーズに対応する技術力・提案力の強化という戦略のもと、昨年4月に子会社を再編しました。技術人材の育成と高度なサポート機能の実装、そしてクラウドサービスの普及に対応した需要創出とビジネス領域拡大を目指して「クラウドディストリビューター」としてのブランディングをDISグループで連携して推進しています。

 

繊維事業ではガバナンスの強化が最重要であり、コンプライアンスの徹底や内部統制強化はもちろん、事業部門・生産拠点における集約を進めています。繊維素材・加工技術の研究開発についても部門を越えた水平展開が進めやすい体制を整備しました。

 

産業機械事業は、顧客ニーズに幅広く応え収益基盤を強化するために、サービス事業の拡大を掲げており、全社的な推進活動により従業員教育やアライアンスの強化に着手しています。


いずれの事業においても業績目標の進捗という意識のみではなく、10年先を見据えた仕組みづくりが肝要であり、リスクを恐れずに挑戦することが欠かせないと考えています。

 

―ホールディングスとしての今後の役割について教えてください。


中期経営計画で掲げたビジネスモデル変革に挑戦する中で、ホールディングスとしては外部からの評価を適切に受け止めていく必要があります。2022年4月4日に東京証券取引所の市場区分が刷新され、当社は従来の東証一部から移行して「プライム市場」に上場します。プライム市場は、多くの機関投資家の投資対象になる規模の時価総額を持ち、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業を対象とした市場です。


プライム市場の上場会社には、コーポレートガバナンス・コードに基づくサステナビリティ(持続可能性)への取り組みの充実など、より高いガバナンス水準が期待されることになりますが、新市場のコンセプトをしっかりと認識して組織体制の整備や情報開示に取り組むことで、当社グループのさらなる発展につなげていきます。

 

サステナビリティについては、社会全体の価値観として浸透しており、企業の取り組みとしては、気候変動などの地球環境問題への対策、人権の尊重、従業員の労働環境の配慮、取引先との公正な取引など、多岐にわたります。当社では今年1月にCO2排出量削減目標や、人権などに対する考え方を開示しましたが、あわせて具体的なビジネス領域に照らして議論を深めることも重要です。必ずしも新しいアイデアのみが求められるわけではなく、既存の取り組みをサステナビリティの観点で評価し、活動レベルを高めることも有効でしょう。


例えば、当社の前期業績をけん引した文教ビジネスでは、全国の学校におけるICT導入を支援することで、次世代教育やイノベーション人材の育成に貢献しています。そして、充実した環境で学んだ子ども達が、最新テクノロジーを活用しながら社会課題を解決していく好循環も期待できます。


一方で、当社グループが一体となってサステナビリティを推進していくには、進むべき方向性を示す羅針盤が必要です。そのためには事業会社間で連携して社会の変容に機敏に反応することが大切であり、ホールディングスの果たすべき役割が大きくなると考えています。あらゆるステークホルダーと協調しながら体制の強化に取り組み、企業価値向上のストーリーを描くことで、当社グループの持続的成長を目指してまいります。