発電設備に用いられる軸(シャフト)や軸受(ベアリング)は工作精度の高さによって設備の稼働ロスが減り、より効率よく電力を生み出すことができます。また振動等による故障の発生も抑えることができ、安定した稼働にもつながります。この高精度かつ大型の軸受も製作できるオーエム製作所の中大型立旋盤は、洋上風力発電施設で活躍の場を広げています。

世界で成長を続ける風力発電市場
海岸線の長い日本の地形に適合

再生可能エネルギーには主に太陽光や水力、風力がありますが、稼働時間の長さと生産量の大きさバランスから風力への期待が高まっています。風力は太陽光と異なり昼夜を問わずエネルギーが利用でき、プロペラ等の風車の直径を大きくすることでエネルギーの生産量(発電量)を増やせるからです。また施設の設置場所についても水力発電では大量の水流のある場所という制限がありますが、風力発電には理論的には制限がないことも優位性として挙げられます。

実際に世界の風力エネルギー市場規模は安定的かつ高い比率で成長を続けており、中でも洋上風力発電への関心と需要が高まっています。風力発電には風車(水平軸のプロペラ型が一般的)とナセルと呼ばれる発電ユニット、そしてタワーで構成される設備が用いられますが、この設備は陸上あるいは洋上に設置します。

 

洋上では陸上よりも大きな風を持続的に得られ高容量の電力が得やすいこと、設置場所が確保しやすいこと、設備が破損しても人的被害のリスクが低いことなどが利点として挙げられ、その結果、洋上風力発電の設置が増えているといいます。また日本は島国で海岸線が長く、国土面積が狭いことから洋上風力発電が適しています。そのため再生可能エネルギーとして風力が注目されているのです。

 

また洋上風力発電には着床式と浮体式の大きく分けて2種類の設置方法があります。着床式は施設を海底に固定して建設する、主流となっている設置方法です。一方の浮体式は船舶のような構造物を海上に設置して、海底に固定したいかり(アンカー)でつなぎ止めます。

 

着床式では設置する水深に制限が生じますが、浮体式では深海の海域にも設置できるため設置できる場所がより広がり、また浮体式は設置にかかるコストも低いなどの優位性があるなど、風力発電の導入を促進すると見られています。

中大型立旋盤で生み出される
基幹ユニット内の多くの部品

風力発電設備では風力を運動エネルギーに変換するため、風向きに応じて本体を旋回させて風車を効率よく旋回させる必要があります。そして、その回転エネルギーを増速機を通じて増幅させて発電機を稼働させることで、より効率の良い発電システムが実現されます。

 

これらの仕組みの中で本体の旋回、回転翼の旋回、増速機等に使用される軸受を製作するために中大型立旋盤が必要となります。特に増速機や発電機等が格納される基幹ユニットであるナセルについては騒音を可能な限り抑える必要があるため、稼働時の振動を抑えるために使用される軸や軸受には高い精度が求められます。

 

オーエム製作所が製作する中大型立旋盤が前述の各部品に求められる要件を満たす精度と性能を有しており、特に風力発電施設の増加に伴って需要が伸びています。またナセル内は多くの部品で構成されており、大径で旋削加工が必要な部品は需要が見込めます。

提案型営業で付加価値を訴求
発電全般でビジネスの機会拡大

風力発電市場での成長に向けてオーエム製作所は既存顧客に対する既製品販売に留まらず、社内で展開しているソリューションビジネスプロジェクトにおいて風力発電設備で使用される部品を効率よく加工し、導入効果が期待できる提案型営業も推進しています。この取り組みによって、既存ユーザーの満足度向上および新規ユーザー開拓を進めていきます。

 

また風力発電設備における一部の付加価値の低い部品は中国を中心に生産されていることから、現地での再生可能エネルギー市場の成長に向けて現地販売子会社と商社との連携を再強化して、商談機会の獲得と短納期製品の提供体制を整えることで、中国市場への販売促進を強化していきます。

 

さらに発電全般でCO2排出量削減が求められる中、まずは既存の古い石炭火力発電から高効率のガスタービンへの置換が進み、その過程において今後5~7年程度産業用ガスタービンの需要が見込まれます。こうしたガス発電の変化に対して、発電設備構造が航空機エンジンと同じ機構となるため、これまで積み重ねてきた航空機部品加工のノウハウを駆使することができます。それにより、事業としての成長のみではなく、加工時間短縮による省電力、機械全閉カバーによる工場環境改善およびオペレータの健康への配慮などのユーザーのESG課題の解決にも貢献していきます。