ITインフラ流通事業のDISグループが、「クラウドビジネス」をキーワードに事業拡大に取り組んでいます。この「クラウド」とは何か、ICT市場での変化を交えながら解説し、そこから見えてくるDISの戦略について説明します。

クラウドビジネスが急成長を続ける理由
ICTに関する課題を一気に解決

私たちはいくつもの深刻な社会課題に直面しています。これらの社会課題の解決には長い時間がかかるでしょう。しかし対策はすぐに必要であり、その有効な対策の一つとして注目されているのが「クラウド」です。

 

クラウドを導入、利用する企業が急増しており、クラウドビジネスが急成長していることからも、その効果の有効性がうかがい知れます。そして今後もクラウドの市場規模は拡大を続けると、世界中の多くのアナリストが調査結果を公表しています。では、なぜクラウドの利用が拡大を続けるのか、どのような効果をもたらすのかについて考察していきましょう。

企業に求められるデジタル化
従来手法での推進は限界

従来、コンピューターのシステムは、まずサーバーやストレージ、ネットワーク機器といったハードウェアと、OS(Windowsなどの基本ソフト)やミドルウェア、アプリケーションソフトなどのソフトウェアを購入し、社内に設置してシステムを開発し、完成後に業務で利用するという手順で導入されてきました。これまでコンピューターのシステムは複雑な計算が必要な経理業務や、大量の情報を扱う受発注や売上、在庫などの管理といった人手では手間がかかりすぎる領域に限って導入、利用されてきました。そしてオフィスでの日常業務のほとんどは人手で行われていました。

 

しかし少子高齢化が進み生産年齢人口の減少が続いており、人手に頼っていた業務を行ってくれる人材の獲得が困難になっています。この人材不足はオフィスワーカーだけではなく、ものづくりに従事する専門職、ICTや情報セキュリティのエンジニアなど、さまざまな領域で深刻化しています。

 

こうした人材不足を補う手段として、多くの企業で業務の電子化が進められてきました。例えば最近では定型業務や反復的な事務作業をパソコンで無人で処理させる「RPA」(Robotic Process Automation) が注目されています。RPAは別名、仮想知的労働者(デジタルレイバー)とも呼ばれ、パソコンが人に成り代わってロボットのように単純な事務作業を行ってくれる仕組みです。

 

RPAの例のように人手で行っていた業務をソフトウェアなどで電子化することにより省人化し、人材不足を補うという取り組みが企業において進められるようになりました。その結果、企業ではこれまでとは比較にならない、より多くのシステムを導入しなければならなくなったのです。

 

しかしこの取り組みには、負担とリスクが伴います。まず従来の方法でシステムを導入すると、サーバーやソフトウェアの購入にコストがかさみ、システムの開発に時間がかかり、業務の電子化はすぐに限界を迎えます。そもそも人材が不足しているため、システムを開発するエンジニアを確保すること自体も難しいのです。

 

また導入したシステムの保守・管理は属人的になりがちで、担当者が退社すると誰も面倒を見られなくなります。さらに導入したシステムの使用期間が長期化すると、ハードウェアの保守部品が入手できなくなったり、ソフトウェアのサポートが終了してしまったりするなど、システムを安定的に利用することが困難になります。システムが利用できなくなると、そのシステムが受け持つ業務が停止してしまうというリスクが生じます。

 

さらにコロナ禍の例を挙げるまでもなく、先行きが不透明で見通しが立てられない状況下において、突然の変化に対応しなければならないという課題もあります。例えば急遽、テレワークを実施しなければならなくなった昨年春、Web会議システムが必要になりました。今後も突然の出来事に対して、ICTを活用した対策で即応することが求め続けられます。しかし従来の手法でサーバーやソフトウェアを購入してシステムを開発していたら、間に合うはずがありません。

ICTの課題を一気に解決する
クラウドがもたらすメリット

業務を行う人材不足対策としてのシステム導入にかかるコストと時間、ICTや情報セキュリティの人材不足、保守・管理の属人化およびブラックボックス化のリスク、システムの老朽化のリスク、新しいシステムでの迅速な対策といったこれらの課題を一気に解決できるのが「クラウド」なのです。そのため企業でのクラウドの導入が急増しており、それに伴ってクラウドビジネスが急成長を続けているのです。

 

ところでクラウドという言葉は広く知られていると思いますが、クラウドとは何でしょうか。クラウドは雲を意味する英単語ですが、文字通りシステムに必要なサーバーやストレージなどのハードウェアと、さまざまなソフトウェアがたくさん集まって空に浮かぶ雲のように存在し、地上にいる不特定多数の人や企業がインターネットなどのネットワークでアクセスして利用するという仕組みであり、サービスなのです。

 

クラウドの雲の中にあるシステムはユーザー(個人、企業ともに)の資産ではありません。あらかじめ事業者が用意しており、ユーザーは必要なときに、必要なサービス(機能や仕組みなど)を選び、必要な量(性能や容量など)を必要な時間だけ利用できます。

 

そしてユーザーは電気や水道、スマートフォンと同じように、使った分だけ月額などで支払います。不要になったら解約もできますし、新たに必要になったサービスを追加することも簡単にできるなど、ユーザーにとってとても都合が良いものなのです。

 

ユーザーとしては、システムはすでに完成しているため、必要な機能や仕組み(サービス)はすぐに利用できます。またシステムは事業者が用意するので、ハードウェアやソフトウェアを購入する資金も不要で、システムの開発にかかるコストと時間もかかりません。システムの保守・管理も不要で、システムは短期間で最新化されるため老朽化のリスクもありません。

クラウドの真価を引き出す
押さえておきたい勘所とは

こうしたクラウドの特徴が冒頭で指摘した企業が直面しているさまざまな課題に対して、有効な対策となることが理解できると思います。ただしこれらのクラウドの特徴を自社の課題の対策として実際に活用するには、押さえておきたいいくつかの勘所があります。

 

まずクラウドは空に浮かぶ雲のように、さまざまな大きさ、形(形態)の事業者およびサービスが存在します。あらゆる業種、規模の企業のあらゆる要望に応えられる豊富なサービスと設備を有するグローバルベンダーをはじめ、特定の業種や業務、用途に特化したサービスを提供する事業者など、実にさまざまです。

 

クラウドの利用形態は1社の事業者のサービスで統一して利用する以外にも、複数の事業者のサービスを組み合わせて利用する「マルチクラウド」、あるいは自社で保有しているシステムとクラウドを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」などの選択肢があります。

 

さらにグローバルベンダーでは膨大な数のサービスを提供しており、ユーザーの課題解決に必要な利用形態やサービスを選択することは容易ではなく、最適解を導くには世界中のさまざまなクラウドの事業者とそのサービスに精通したICTパートナーに支援を求めるしかありません。そもそも自社のICTパートナーが、利用を検討しているクラウドの事業者やサービスを扱っていないという状況は避けるべきでしょう。

 

市場規模が拡大するクラウドビジネスでの成長に向けてダイワボウ情報システム(DIS)では、ユーザーに対してクラウドの真価を発揮できるソリューションサービスを提供するために、数多くのグローバルベンダーとパートナーシップを結んでおり、さらに国内の主要事業者をはじめ、あらゆる業種や領域の専業事業者も網羅するなど、ユーザーの多様化する要望に応えられるラインアップを取り揃えて、ユーザーがハイブリッドクラウド、マルチクラウドでICTを利用できるソリューションサービスを提供しています。

 

また全国90カ所以上の拠点と各地の販売パートナーを通じて顧客を支援する体制も構築しており、DISとパートナーの担当者がユーザー企業を念頭にコミュニケーションを図ることで、導入効果を高めるとともにサービス利用の拡大や新たな需要の開拓などビジネスを伸ばす活動も積極的に展開しています。

 

パートナーにとっても顧客にとっても、さまざまなクラウドサービス、必要とされるICT製品やサービスの複雑化する管理をDISが提供するiKAZUCHI(雷)を活用することで簡素化でき、これらの支援も受けられるというメリットがあります。DISは、これまで展開してきたオンプレミスのノウハウとクラウドビジネスを融合させることで、販売パートナー、ユーザーにとって最適なITインフラを提供していきます。