ダイワボウホールディングスは、2021年度(22年3月期)から新たな中期経営計画をスタートさせ、さらなる成長を目指すことで企業価値向上に取り組んでいます。西村幸浩社長に、中期経営計画のポイントや将来的な展望について語ってもらいました。

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長
西村 幸浩

─ 前期(21年3月期)は連結売上高が1兆円を超える好業績でした。一方で特需の反動も懸念されますが、新たな中期経営計画の役割をどのように考えていますか。

 

前期は新型コロナウイルス感染拡大により事業環境が大きく変化する中で、緊急措置としてのテレワーク環境の整備や教育現場におけるICT導入促進などの急速な需要の高まりを捉えて過去最高業績を達成することができましたが、グループとしての今後の課題が明確になった一年でもありました。特に需要反動の局面を迎えたITインフラ流通事業では、業界内での自社のポジションをあらためて分析した上で、従来のビジネス領域を超えた新たな価値の創出による成長曲線を描いていく必要があります。


また繊維事業、産業機械事業についてもコロナ禍のマイナス影響が長引く環境下で、ステークホルダーの皆さまからの期待に応えていくためには、事業毎の管理体制の刷新と収益力向上が欠かせません。そして、長期的な視点では社会課題解決への貢献や、未来を担う人材の育成について積極的に取り組んでいくことが重要なテーマです。そうした意味を込めて、今期からスタートした中期経営計画の3ヵ年を「将来にわたる発展を見据えた転換期」と位置づけました。

 

─ 中期経営計画のグループ基本方針について説明してください。


まずは、「次世代成長ドライバーの創出」を掲げました。これまでの10年で当社グループは飛躍的な成長を遂げましたが、これからの10年を支える原動力が求められています。事業領域の選択と集中や、未開拓分野の発掘により従来型ビジネスからの変革に取り組みます。

 

あわせて、DX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードにあらゆる分野のデジタル化が一気に加速する中で、その潮流を捉えたビジネス展開を強化していきます。当社は、これまでの取り組みが評価され、今年8月に経済産業省が定める「DX認定事業者」としての認定を取得しました。あらためてグループを挙げて社会インフラのDXを推進することで、新たな成長につなげていきます。


次に「リーディングカンパニーとして新たな社会作りへの貢献」です。当社グループの3事業はいずれもB to Bのビジネスモデルであるため、パートナーシップを駆使したマーケット創造と、サービス&ソリューション強化によるお取引先さまとの信頼関係向上に取り組みます。

 

そして、社会課題の解決に貢献することで事業の拡大を目指します。これはSDGsの観点も踏まえた事業活動となり、教育分野のICT化、医療環境の整備、あらゆる現場の生産性向上、防災・減災への取り組み、さらには環境に配慮した商材開発などが挙げられます。


最後に「経営基盤変革」です。ポイントとしてはキャッシュフローの適正配分、人材育成、そしてガバナンス強化を重視しています。特に人材育成については、未来を創っていく上で最も重要と捉えており、成長を支える組織風土を醸成して、グループ全体で連携しながら人材活用と労働環境整備に取り組みます。

 

そしてコーポレートガバナンスについては、社外取締役の増員を含めた経営体制強化など着実に改善を進めています。各事業部門においてもコンプライアンス意識の浸透、業務プロセスの内部統制について継続して力を入れることで実効性を高めてまいります。


─ 中長期的な成長イメージとその実現に向けた考え方について教えてください。


将来にわたる発展を目指すには、資本効率を高い水準で保っていくことが求められます。そのために、中期経営計画においてROE(自己資本当期純利益率)とROIC(投下資本利益率)をグループ経営指標として設定しました。特にROICは企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標ですが、要素を分解して捉えていくことで、営業だけではなく製造や管理を含めたすべての部門と関連付けることができます。

 

各事業セグメントにおいて、ROICを経営目標の一つとしてビジネス構造と投下資本を明確にし、さらに部門単位で展開していくことで、グループ全体としての企業価値の創造につなげていきます。


あわせて、持続可能な社会との共生という考え方が今後ますます重要になることは言うまでもありません。昨今、当社事業を取り巻く環境の変化は目まぐるしく、特に脱炭素化をはじめESGに関連する社会要請の高まりは「待ったなし」の状況です。

 

そうした動きに対応できなければ、将来的にサプライチェーンから退場せざるを得なくなるという危機感を共有して、当社グループが果たすべき役割を見出していかなければなりません。ESGへの取り組みはグループ全体で連携して計画的に進めていますが、リスク対策として捉えるだけでなく、変化するチャンスであるという意識を浸透させて、両方の観点からビジネスに結び付けることで、社内風土の醸成やコスト対応に取り組み続けていきます。


本中期経営計画を遂行しながら、その先を見据えた施策をデザインしていくことで、今期を土台にして新たな飛躍につなげていくことができると考えています。ステークホルダーの皆さまから長く信頼いただける会社を目指して、次の時代への成長戦略と事業を通じた社会貢献の実践により、持続的な企業価値向上に取り組んでまいります。