ダイワボウホールディングスが掲げる中期経営計画は、2023年度(24年3月期)で3ヵ年の最終年度を迎えます。2年目までの業績の振り返りと将来に向けた展望について、西村幸浩社長が語りました。

ダイワボウホールディングス
代表取締役社長
西村 幸浩

ー今期(2023年3月期)について第3四半期までの振り返りをお願いします。


第3四半期決算とあわせて、通期業績予想の上方修正と増配予想について発表しました。ITインフラ流通事業にて、前期からの懸案であった、半導体不足に起因する品薄や納期遅延については改善しつつあり、全国各地の企業向けの大型案件をはじめ、環境の変化を機敏に捉え、需要を的確に獲得したことで、期初の計画を上回る勢いで連結業績を牽引しています。


一方で、為替の変動や原燃料価格高騰の影響が長引く事業領域では、課題がより明確になってきました。期末に向けて、外部環境の厳しさをリカバーするための施策を着実に実行していくことはもちろん、前例や慣習にとらわれずに、事業としての中長期的な収益性・成長性を慎重に見極める必要があります。


―中期経営計画の最終年度に向けた方針はいかがでしょうか。


2021年から始動した中期経営計画について、この3ヵ年を「将来にわたる発展を見据えた転換期」にしていくことを強調してきましたが、最終年度はその真価が問われる1年になると捉えています。

 

特に、2月に発表したアルファテック・ソリューションズ(ATS)の当社グループへの参画は、グループのあり方として象徴的な「転換」と言えるでしょう。IT業界は大きな変革期を迎えていて、クラウドサービスなどの形のないIT商材への需要が高まっています。中期経営計画では、テクノロジーの革新によるビジネス環境の変化に対応するために、ダイワボウ情報システム(DIS)における技術力の確保を目的とした業務提携やM&Aを、戦略として掲げていました。ATSとDISがタッグを組むことによって、ITディストリビューターとしての機能強化および事業領域拡大が実現することで、新たな成長につながる大きな一歩になると考えています。


さらに、繊維事業では研究開発体制の強化と事業再編による構造改革、産業機械事業ではサービス事業の拡充による収益改善などをテーマに、既存のビジネスモデルやリソースの枠組みに留まらない多角的な検討を進めています。2025年3月期からの次期中期経営計画に向けて、事業ごとにエクイティストーリーを組み立てていくことが重要です。


またグループとしてのキャッシュフローの配分については、中期経営計画に基づき、これまで配当や自己株式取得などの株主還元の充実化や、持続的成長に向けた投資に取り組んできました。最終年度においても、方針に沿った適切な配分により、ホールディングスの役割を果たしていきます。

 

―当社グループの中長期的な展望について教えてください。

 

グループ各社の役割と責任を明確にするために、2020年4月に経営体制を一新してから、およそ3年が経過しました。上場持株会社であるホールディングスの取締役会構成や管理機能の拡充をはじめ、グループ会社間の連携体制も見直し、ガバナンスは着実に強化されています。また重要な社会課題として、「脱炭素」や「人的資本」などのテーマが大きく取り上げられるようになったことを背景に、当社においても足元の業績目標に向けた取り組みだけではなく、長期的なサステナビリティを念頭に置いた企業活動が活発になってきました。


そうした当社グループの変遷や将来に向けた軌道を、株主・投資家、取引先や従業員といったあらゆるステークホルダーに対して幅広く発信するために、当社は2023年に統合報告書を発行することを目指しています。統合報告書は、当社グループが自ら社会的責任を示し、透明性を高めることで、社内外ともに信頼関係を揺るぎないものとして、企業価値の向上につなげていくための重要なツールです。まずは、2030年を一つのマイルストーンとして、当社グループのあるべき姿をステークホルダーとしっかりと共有し、そこからバックキャストする観点で、一体感を持って着実に前進していきたいと考えています。


当社には、時代の流れに対応して変革を繰り返しながら、事業規模を拡大してきた歴史があります。これからも、当社グループは、新たな価値を創造することで社会的な期待および要請に応えるべく、次のステージはもちろん、その先のさらなる飛躍を見据えた事業運営に取り組んでいきます。