ダイワボウグループは、ITインフラ流通事業、繊維事業、産業機械事業の3事業を主力としています。それぞれの中核事業会社のトップに“コロナ・ショック”による事業環境の変化や、それを乗り越えるための戦略について聞きました。
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- ITインフラ流通事業
ダイワボウ情報システム 代表取締役社長 松本 裕之
―2019年度のITインフラ流通事業の業績を振り返って成果と課題をどのように見ていますか。
前期の事業環境としては、2020年1月にWindows7のサポートが終了したことでPC更新需要がピークを迎え、あわせて働き方改革による生産性向上や労働環境整備に向けてIT投資が活況となりました。その中で、企業向けの需要を中心に、文教分野や官公庁・自治体向けにも、地域密着の営業活動できめ細かく対応したことで、当社創業以来の最高業績を更新することができました。これは当社がITディストリビューターとして、メーカーと連携して商品・サービスの機会ロスを最小限にとどめるための調達を図り、全国の販売パートナーと柔軟かつ迅速な協業を推進し続けてきた成果であり、IT投資のニーズが多様化する中、マルチベンダーである当社の役割はますます重要になったと感じています。
また当社の国内PCマーケットシェアは、5年連続で拡大しました。法人利用PCの3台に1台程度は当社を介してユーザーに提供されています。周辺機器やソフトウェア、サービスといったニーズにも複合的に応えることができました。
―新型コロナウイルス感染拡大でどのような影響が出ていますか。
社会情勢に混乱が生じる中、国内企業が業績悪化によってIT投資を抑制せざるを得なくなることが危惧されます。また海外における感染拡大や経済・貿易摩擦によるサプライチェーンの乱れも、予断を許さない状況です。
一方、各企業で新たな労働環境を整備する機運が高まり、特にノートPCや液晶ディスプレイ、イヤホン・マイクといったテレワークに利用する機器に加え、ビデオ会議やファイル共有を効率的に実現するソフトウェアなどの需要が増加しています。また、世界規模で見ると日本はクラウド支出の比率が低いと言われていますが、「所有」から「利用」へIT投資の比重が変化し、今後急速にクラウドが普及することも期待できます。これまでにないニーズに対応するべく、お客様の声に耳を傾けながら、連携してこの難局を乗り切っていきます。
─2020年度は中期経営計画の最終年度ですがどのような戦略で臨んでいますか。
今期は、PC需要の反動減や企業のIT投資抑制などマイナス面も懸念されますが、新たなIT需要が創出されるプラス面も必ずあるはずです。テレワークは一気に導入へと舵が切られましたが、既に存在したソリューションでもあります。これから重要になるのは、過去に経験したことのない事業環境を生み出すIT整備です。そのために、世界中のテクノロジーを組み合わせるなどの工夫をしながら、利活用シーンを見出していかなければなりません。これは当社だけで実現できるものではなく、メーカーや販売パートナーと知恵を出し合って取り組みます。
もう一つ、確実に貢献しなければならないのが、国の施策である「GIGAスクール構想」です。全国の小中学校で、児童生徒1人1台の端末整備と、高速大容量の通信ネットワーク整備が進められています。新型コロナウイルスへの緊急経済対策として2020年度の補正予算も追加され、教育分野でのICT環境整備は急務となりました。当社は、地域密着の営業活動とマルチベンダーの供給力を生かし、キッティング、教育研修などを含めたトータルサポートで取り組みます。また学校でのICT普及に伴って、家庭でもICT機器の利用が拡大するでしょうから、コンシューマ事業でもニーズに応えていきます。
─市場環境の変化に対応するために目指すべきビジネスモデルを教えてください。
テクノロジーの進化と生活スタイルの変化によって、ITの利用シーンが多様化していますが、PCやタブレット、スマートフォンといった端末をはじめ、表示装置、ネットワーク機器などのデバイスは、あらゆるIT環境にとって不可欠な存在です。当社はデバイスの流通を重要な事業基盤として、これまで以上にサービスレベルを追求していきます。あわせて普及が進むクラウド市場においては、顧客ニーズに合わせて複数のクラウドプラットフォームから提案できる体制を整え、提供サービスのラインナップ拡充を進めています。その管理ポータルである「iKAZUCHI(雷)」の機能強化も欠かせません。契約・請求管理といった工数軽減だけでなく、サイバーリスクに対するサポートなど、販売パートナーのみならずエンドユーザーにも価値を提供しながら、多様化するサブスクリプションビジネスの基盤として進化を続けていきます。
そして、技術力・サービス力向上による事業領域の拡大もテーマです。高度化するITインフラやサーバー、ストレージなどの商品構成や導入のサポート体制を強化します。また一部の製品では、監視・運用・保守を当社のオリジナルサービスとして提供しています。運用コスト・工数を軽減することで、販売パートナーのビジネスを加速させながら、エンドユーザーの利便性向上を実現することが目的です。こうした当社ならではのサービスによる新たなビジネスモデルを付加することで事業基盤を強化し、国内のIT環境整備に貢献していきます。
DAIWABO HOLDINGS Digest no.65(2020年8月発行)
- 新たなグループ経営体制で次の時代に挑む /ダイワボウホールディングス 代表取締役社長 西村 幸浩
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【ITインフラ流通事業】新たなサービスによるビジネスモデルで国内IT環境整備に貢献
/ダイワボウ情報システム 代表取締役社長 松本 裕之 -
【繊維事業】新組織で“ファイバー戦略”を深耕しSDGsに積極的に取り組む
/大和紡績 取締役社長 斉藤 清一 - NCAAブランドでフルアイテムを展開、FILAブランドではバスケットボールにも参入 /ダイワボウアドバンス
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【産業機械事業】企業体質の改革で“ピンチをチャンス”に変える
/オーエム製作所 取締役社長 佐脇 祐二 - 鉄道運行の安全を支える車輪旋盤 /オーエム製作所
- DISグループの物流戦略 東西メガセンター体制が始動
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