ダイワボウグループは、ITインフラ流通事業、繊維事業、産業機械事業の3事業を主力としています。それぞれの中核事業会社のトップに“コロナ・ショック”による事業環境の変化や、それを乗り越えるための戦略について聞きました。

繊維事業
大和紡績 取締役社長 斉藤 清一
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繊維事業
大和紡績 取締役社長 斉藤 清一

─2019年度の繊維事業の状況をどのように振り返りますか。

 

繊維事業は3つの事業部門から構成されていますが、それぞれに良かった点、悪かった点が混在しています。合繊・レーヨン事業は、特に期の前半で、原燃料高やインバウンド需要の落ち込みの影響を大きく受けた一方、合繊工場の採算性、稼働率、生産性を向上させ、メーカーとしての地力がつきました。レーヨンも原燃料価格の変動に苦しめられましたが、改質技術の強化や生産効率向上で成果を出しています。販売不振を工場の“現場力”“キャパシティー適応力”によって利益面で補うことができたといえるでしょう。

 

産業資材事業は前半まで順調に推移していましたが、重布や建築資材などで後半から急ブレーキがかかりました。人手不足で建設工事が進まないことの影響が出ています。一方、フィルターはセンサー関連用途で底堅い需要がありました。

 

製品・テキスタイル事業は、市場環境が低迷する中でも2019年度においては比較的安定しており、サステナビリティの観点で注目の高まる「コットンUSA」認証のアメリカ綿などに力を入れました。新型コロナウイルスで状況が一変してからは、急激に商況が悪化しましたが、感染予防で抗ウイルス・除菌関連製品の需要が急増したことで、売上高減少を一部補っています。

 

─2020年度は長引く新型コロナ禍で一段と事業環境が変化することが想定されます。

 

第1四半期(4~6月)は、何とか踏ん張っている状態でした。特に除菌関連は堅調に推移しています。しかし、やはり感染拡大の経済活動全体への悪影響は大きく、特に産業資材事業が深刻です。自動車など国内の生産活動が停止したことや、輸出の減少で需要が落ち込みました。製品・テキスタイル事業も小売店での衣料品販売が減少した影響が大きく出ています。

 

─中期経営計画の最終年度を迎えましたが、繊維事業としての戦略を教えてください。

 

当社は4月から事業会社5社と統合し、繊維事業の中核事業会社として再出発しました。メーカーとしてSDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組む方針です。取引先企業もSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)重視の姿勢を一段と強めていますから、こうした活動が社会的信認につながります。これまで環境に配慮した原料や加工技術の活用を進める“ファイバー戦略”に取り組んできましたが、これを引き続き強化し、二酸化炭素排出量削減なども、優先順位を明確にして実行することが重要です。さらには廃棄の容易さ・資源循環を前提とした対策が必要になるため、天然素材「コットンUSA」や木材由来のレーヨン短繊維の強みを生かすほか、再生ポリエステル原料や生分解性原料を使用した提案に注力します。生産工程の短縮を目指した製造プロセスの革新にも取り組まなければなりません。

 

また、新型コロナウイルスの問題は短期的に終息するものではないため、“ウィズ・コロナ”の時代には単純な感染症対策だけでなく、生活空間全体の衛生や環境改善が問われるようになるはずです。これまで研究を重ねてきた抗ウイルス素材・加工を、各事業での商品開発にあらためて活用することで、生活空間全体で感染リスクを抑えることに貢献します。


一方で、ビジネスモデルの変革も求められます。世界的にサプライチェーンが打撃を受けたことから、国内消費や国内生産の重要性が見直されるでしょう。また働き方の面では、テレワーク等を実際に経験し、効率化すべき点が明確になってきました。守るだけではダウンサイズしてしまいます。今までの延長線にない事業創造を図らなくてはいけません。事業戦略も働き方も、“常識を疑う”くらいの柔軟な発想を持って、新たな組織で挑戦してまいります。